第19話 『リオンネッターの悪夢』(2003/02/01放送)

脚本/高山治郎
コンテ・演出/宮地昌幸
作監/しんぼたくろう・高瀬健一

■ゲイナー・サンガの前回のあらすじ。
「不安は、人間を絶望させるしヤケにもさせるから、やることまで間違えてしまう。オーバースキルとしては最悪の攻撃かもしれない。ガウリ隊長はその生け贄にされかかって、僕らは味方同士戦うことにもなった。しかし、生きていくことによって、そういうものを乗り越える力も手に入れられるんだ。やさしさ、というもので」
■毛長象の群れ。
ゲイン『俺は人じゃない。お前らと同じ獣だ。弱きを噛み砕き、向い来る者に牙をむく』
ゲインはその群れにライフルの照準を定める。
そこへキングゲイナーが飛来して、
ゲイナー「捕まえましたから、ゲインさん、先にこの子たちを運んどきます」
毛長象2頭を抱えて去っていく。
ゲイン「ふん、手足のように使うようになったか」
■ゲイナーはユニットに戻る途中で、動けなくなった一台のシルエットマシンを見つける。
その中からエリアル・ニールセンが降りてくる。
エリアル「1号ユニットまで運んでくれ。黒いサザンクロスへ届けものがあるんだ」
■「ヤーパンの天井」を牽引するバッハクロン。
エリアル「黒いサザンクロス様に、注文の品をお届けに参りました。受け取りにサインを」
ゲイン「まさか、貴様が来るとはな。もう、冗談はやめてくれよ」
エリアル「はーはっ、久しぶりにこういう気分にもなるさ」
エリアルを見てときめくコナ。その横にはエリアルが持ってきた馬鹿でかい荷物がある。
エリアルとゲインはその場を去る。
コナ「ゲイン、(エリアルを)紹介ぐらいしなさいよ〜」
ゲイナー「ゲインが、前に『エクソダス』したときの知り合いなんだって」
サラ「じゃあ、あの人も『エクソダス』経験者なのね」
アナ姫「でもその『エクソダス』は失敗したのでしょう?」
コナ「よくご存知で…ふーん」
■ゲイン「さあ、食ってくれ。捕れたての毛長象の肉だ。うまいぞ」
エリアル「黒いサザンクロスが象狩りとはね…あの少年が、新しい相棒か?」
ゲイン「ああ、肉はさばけないが、生き抜くセンスはある」
エリアル「なるほどな…ドームポリスでシベ鉄の運んでくる食糧を待っているうちに、人間ってのは生き物としてのたくましさを失くしちまったようだ」
ゲイン「だからこその、『エクソダス』さ」
■シベ鉄の列車が走る。オーバーマン、リオンネッターが積まれている。
列車内。ジャボリとカシマル・バーレの会話。
どうやらエリアル・ニールセンは、カシマルによって「ヤーパンの天井」に送り込まれたらしい。
■翌日。
エリアルが運んできたパーツと、前回破壊されたガチコの残ったパーツや拾った残骸で、ゲイン用のマシンが組み立てられている。
コナ「ねえ、ゲイン、エリアルさんは?」
ゲイン「ん?」
コナ「パーツのジョイントのことで、聞きたいことがあるんだけど」
ゲイン「まだ寝てるんだろう。こんな早起きするのは、働き者の俺たちぐらいだ」
コナ「あ、あんたのおもちゃ作りにつき合わされてる身にもなってよ」
ゲイン「悪かったよ。けどな、これはおもちゃじゃない」
コナ「ただのシルエットマシンじゃない」
ゲイン「いや、今作ってるのは、人も殺せる、オーバーマンだ」
■ガンガランの難民に対する憎しみを口にするヤーパンのピープルたち。
その中を行くエリアルエリアルとガンガランの市長との密会。
市長「ガンガランのピープルに死傷者が出るようなことは、ないだろうな」
エリアル「安心しろ。暴動を起こして注意を引きつけるだけだ。成功した暁には、ガンガランを上のランクのドームポリスとして復興させる。シベリア鉄道総裁、キッズ・ムントの御墨付きだ」
市長「おお、キッズ殿の…はっはっはっ、この計画のことを知ったら、ヤーパンどもは何と言うかな」
エリアル「さあな」
市長「私が悪いんじゃない。『エクソダス』なんかしようとしたヤーパンどもが悪いのだ。我々は被害者なのだからな。だいたい『エクソダス』などしたところで、上手くいくはずがない。一回流された家畜を放してみろ。共食いを始め、残った者もいずれ野垂れ死んで…」
エリアル、市長に掴みかかる。
エリアル「貴様に何がわかる。俺の前で二度とそんな口をきくな! わかったか!」
■ゲインのオーバーマンは完成間近。
ゲイナー「このオーバーマン、名前を考えてました?」
ゲイン「ああ、『エンペランザ』だ」
ゲイナー「エンペランザ?」
ゲイン「俺が昔乗ってた、オーバーマンの名前だ」
エリアル「懐かしい響きだな」
エリアルがやってくる。
コナ、エリアルに駆け寄り、
コナ「で、エリアルさんも『エクソダス』したことあるんだ?」
ゲイン「コナ、そう詮索するな」
コナ「どこの? いつの『エクソダス』さ」
ショックを受けるエリアル
ゲイン、コナの口を押え、エリアルから引き離す。
ゲイン「さあてね。コナにはガチコのライフルを取り付けてもらいたいんだがなあ」
ゲイナー「(エリアルに)お茶でも飲みませんか?」
エリアル「奴の相棒なら、毛長象の肉くらいさばけるようになっとけ」
ゲイナー「は?」
そこへ警報。
■ガンガランの難民たちが暴動を起こす。
それを押さえるアデット隊。
アデット「話は我々アデット隊がつけるから、騒動は起こすな。毛長象だって、意外なんてもんじゃなくって、うまいんだゾウ〜」
しかし、難民の暴動は止まず、アデットは石を投げ付けられる。
アデット隊「た、隊長、ここは引き上げましょう」
アデット「ここは我が隊の名前を知らせることのできる…絶好の、チャンスなんだゾウ〜」
■ガッハ「アデットめ、ガンガランの難民を挑発しおって。ガンガランの市長は協力を受け入れてくれたのではなかったのか」
ベロー「12番ユニットから後ろは、貯蔵庫みたいなもんですからねえ。ヤーパンの方が、黙っちゃいないんですよ」
■ヤーパンのピープルたちも暴動を起こす。
こちらはゲイナーやサラ、ガウリたちが押さえている。
しかも「ヤーパンの天井」のユニット群の、シベ鉄の線路越えが始まっている。
ゲイナーはゲインからまわりの警戒に出てくれと言われる。
■ガンガランの市長が12番ユニットのワイヤーを切ってしまう。
ワイヤーが切れたことに気づいたゲイナーだが、その時、線路の向こうからシベ鉄の列車が砲撃してくる。
その列車からはカシマルがオーバーマン、リオンネッターで出撃。
■市長の行動が、アデットにバレる。
アデット「市長御自ら機械を動かすなんてさ、ガンガランの市民には、見せられないね」
市長「私は…私は市民のために…」
アデット「笑わせんじゃないよ。『エクソダス』の邪魔をして、キッズ・ムントにご褒美をもらおうって魂胆だろ」
市長「人聞きが悪い。私を脅したところで、すでにカシマル様はこっちに向かっている」
アデット「あんたのピープルを皆殺しにするために来るんだよ」
市長「どういうことだ、まさか、カシマル様が…そんなはずはない!」
アデット「それが戦争だ。他人を裏切るときは、自分も裏切られるってことを覚えておけ!」
市長「あ、あいつもグルだったのか…」
アデット「…あいつ?」
■カシマル「さあ、来なさい、ヤーパンのオーバーマン!」
キングゲイナーVSリオンネッター。
しかし、リオンネッターは分身を作り出し、キングゲイナーに迫ってきた。
ゲイナー「あいつ、分身の術を使ってくるのか!?」
カシマル「キングゲイナー! こんなことで驚いてもらっちゃ困りますよ。このリオンネッターの恐ろしさは、こんなものではありませんのでね!」
アイキャッチ
■ゲインが組み立てたばかりのエンペランザで出る。
エリアルのシルエットマシンの荷台に乗り、シベ鉄の列車へと向かう。
■サラのパンサー、アデットのドーベッグも出る。
■リオンネッターは、今度はキングゲイナーの偽者(王冠付き)を作り出し、キングゲイナーに仕掛ける。王冠付きのキンゲに握りつぶされそうになるキングゲイナー
■アデットが王冠付きキンゲを攻撃。
アデット「あれ、あたし、キングゲイナーを撃っちゃったのかい!?」
サラ「二体いましたから、弱い方がゲイナーでしょ」
アデット「一本足に、偽ゲイナーか!」
サラ「偽キングゲイナーです」
■エンペランザは至近距離からライフルを撃つが列車の装甲はびくともしない。
エリアルがエンペランザに移り、シルエットマシンを列車にぶつけるがそれも効果がない。
ゲイン「エリアル、貴様しっけた火薬を使ったろ!」
エリアル「機体を寄せろ! こうなりゃ直接止めるしかない!」
■列車に乗り込もうとするエリアルを、エンゲとケジナンは防ごうとしたがエリアルにあっさりやられる。
■アデットのドーベッグにはリオンネッターの作った巨大ナメクジが襲いかかる。
サラ「アデット先生を気持ち悪がらせて〜っ」
カシマル「こういうのは好きかな〜?」
サラのパンサーには巨大ガエルが襲いかかる。悲鳴を上げるサラ。
■列車を自ら止めようとするゲイン。
エリアル「ゲイン、ここまででもういいんだ」
ゲイン「ン? なんて言った」
エリアル「俺が受けた依頼は、『エクソダス』の阻止。それともう一つ。お前の抹殺だ」
ゲインに銃を向けるエリアル
■ゲイナー、ナメクジに襲われるアデットと、カエルに襲われるサラを見て、
ゲイナー「二人のお陰で、謎が解けた! 他人の一番苦手なものを写し出すのが、あいつのオーバースキルなんだ!僕は、キングゲイナーは恐くない。だいたいお前はコピーだろ、偽者だろ!」
ぶつかり合う本物と偽者のチェンガン。
ゲイナー「キングの僕を真似るなんて! あいつは…そうか、偽者のゲームチャンプ!」
■アデット「ごめんなさいごめんなさい、もうお塩ふりかけたりしないから許して〜」
サラ「お尻にストローをつっこんでふくらましたりしないから…いいやああああっ」
カシマル「あひゃひゃひゃっ、お前たちは自分の心に負けてゆくのです!」
ジャボリ「運行部長」
カシマル「なんですよ」
ジャボリ「サザンクロスが、列車を乗っ取ったようですよ」
カシマル「抹殺したんでしょ、それ!」
ジャボリ「乗っ取られたって言ってます!」
カシマル「エリアルは何をしてるんです!」
■ゲイン「お前に殺されるのなら、本望だと思ってるよ」
エリアル「俺には俺のたくらみがある。お前には、あの日の『エクソダス』の続きを手伝ってもらう。俺について来い」
ゲイン「あの『エクソダス』は終わっちまったんだ。見事に失敗しちまったじゃないか」
エリアル「お前と別れてから、俺はいろんな組織に身を売るしかなかった。『エクソダス』を阻止する側としてな」
ゲイン「『エクソダス』逆請負人ってやつか」
エリアル「終わっちゃいない! お前と俺がいるかぎり、あの『エクソダス』は終わっちゃいないんだ!」
ゲイン「話はわかるつもりだが…」
■そのとき、ゲインとエリアルのいる列車の先頭にリオンネッターが取り付く。
カシマル「死ぬ前に夢でも見せてあげましょうかね!」
リオンネッター、オーバースキル発動。
ゲインは砂上に横たわるガエラの生首を見、エリアルはかつての『エクソダス』で、逃げまどうピープルたちがゴレームに蹂躙されていくのを見る。
エリアル「あのときは、あのあとでピープル同士も殺し合いを始めちまって」
ゲイン「しかし、いまの現実はそうじゃない!」
エリアル「そうだよ! 『エクソダス』は俺の中でずっと終わっちゃいなくて、いまでも続いているから、俺はまたお前に会いに来たんだぞ!」
ゲイン「それはわかっているが、俺だってガエラを見ちまっているという現実がある!」
エリアル「俺は、『エクソダス』の続きを…」
■カシマル「みんなもろとも突っ込んじゃいなさい」
列車から離れるリオンネッター。気がつくと、列車はユニットに間近に迫っている。
■ゲイナー「ゲームで負けそうなときのおまじないは、『僕は動物だ』。これが現実のパワー! 幻は理性が見るものだー!」
キングゲイナーチェンソーを構えて偽者に突っ込み、斬り込む。
■ゲイン、ライフルでレールを撃ちながら、
ゲイン「ガエラ、俺はまだ現実のなかで生きる。そのためにはエリアル、現実主義者のお前がうらやましかったんだ! 生きることそのものを慈しみながら、ケモノの内臓で暖を取るたくましさがあった。俺は、そういうお前になりたかったんだよ!」
ゲインのライフルはついにレールをねじ曲げ、列車はユニットの直前で横にそれる。
■カシマル「列車の運行を止めるなんて、その罪、万死に値します!」
■ゲイナー「その冠! キングだなんて幻は消えちまえ!」
キングゲイナー、偽者を王冠ごとまっぷたつに斬る。
■リオンネッターはパンチで列車の天井ごと、逃げるエリアルとゲインを押しつぶそうとする。
二人の前にジャボリが現われる。
ジャボリ「エリアル御苦労だった。その男をこっちによこしなさい。今日こそ逃がしませんよ黒いサザンクロス、そのライフルを捨てなさい!」
エリアル「(ゲインに)左にラッタルがある。先に行け」
ジャボリ「だーっ、あたしが撃てないと思ってる〜」
そこへリオンネッターのパンチが。ジャボリが倒れた隙にゲインが先に列車から出る。
エリアルが立ち上がろうとしたときジャボリは発砲するが外れる。
エリアル「ほーら、あんたには人は殺せない」
ジャボリ、拳銃を構えなおして、
ジャボリ「あんたは裏切ったんだ、裏切り者の運命はね…」
エリアル「自分でケリをつけるよ」
エリアル、自分の頭に銃口を向ける。
ジャボリ「うそー!」
■ゲインの背に銃声が響く。
■ゲイン「ゲイナー、そいつを放してやってもいいぞ…」
キングゲイナーはリオンネッターをはがいじめにして押さえている。
ゲイナー「そんなこと言ったって、こいつまた変な技を出してみんなを…」
カシマル「ダイヤ少年は手も足も出なかったくせに」
ゲイン「そいつとは…俺がケリをつける…」
ゲイン、エンペランザに乗り込む。
ゲイン「悪いがゲイナー、下がっていてくれ」
■ゲイナー、リオンネッターを放す。
カシマル「ふん、そんな寄せ集めのオーバーマン、何が出来るっていうの!」
エンペランザのライフルの弾道はリオンネッターの右手をぶち斬り、
ゲイン「遅い!」
続いて左手をぶち斬る。
カシマル「はああああっ!?」
ゲイン「遅い!」
カシマル、逃げる。
ゲイナー「ゲイン! あいつ逃げちゃう!」
ゲイン「(泣きながら)手を出すなぁっ! 逃げるヤツは撃たない主義だったが、今日だけは返上だ!」
ゲイン、リオンネッターに「黒いサザンクロス」の印を撃ち込んでいく。
リオンネッターは爆発し、十字の炎を描いて燃え尽きる。
ゲイン「『黒いサザンクロス』の印は、貴様にはもったいないがな…」
エリアルの弔い。
ゲイナー「これって、ガチコの空薬莢ですか?」
ゲイン「ああ、せめてもの墓石の代わりにな」
コナ「なんか…この人…ね…」
ゲイン「コナ、そろそろ戻ろうか」
サラ「ユニットが動き出したわよ。あたし、警備に回るわ」
ゲイナー「ぼ、僕も」
ゲイン「先に行くぞ」
コナはエリアルの帽子を抱えたまま動かない。
ゲイン「コナ! エンペランザの整備だ! 『エクソダス』は再開したぞ!」
コナ「そうだよね…さよなら、エリアル
コナ、墓石代わりの薬莢の上にエリアルの帽子を置く。

当時の自分の感想を読むと、あまり鬱展開に持っていって欲しくない、とか言ってるんですが、今の気分だと作為的な鬱は論外としてちゃんとした人間ドラマとして描いて欲しかったなという感じがします。相変わらず舌っ足らずで不十分な出来だから余計にそう思うんでしょうね。本放映から3年たち、もう単なる「おバカ」な路線だけってのもどうよ?っていう気分がそろそろ出てきたからなんでしょうね。