第21話『オーバーマンの闇』(2003/02/15放送)

脚本/高橋哲子
コンテ/斧谷稔
演出/五十嵐達也
作監/下井草伊井乃弼

■ゲイナー・サンガの前回のあらすじ。
「ドームポリス『カテズ』の近くで、ついにドミネーターと対決をした。ゲーム仲間だったシンシアが相手で、しかもキングゲイナーのオーバースキルも、パワーアップの気配を見せた。が、現実とゲームに違いが分かっていないシンシアの感触を知って、僕はがく然とした。それは、お腹に受けた傷より、痛いことだった」
■前回のドミネーターとの戦いで傷ついたキングゲイナーがバッハクロンに戻ってきた。
心配でカーゴに駆け込んでくるマンモを抱えたアナ姫とお供のリンクス。
■ドームポリス、カテズ。
「ヤーパンの天井」への追撃はないとエンゲに聞かされ、さらに引きこもったシンシアに取り入る隙もアスハムに奪われ、出世の望みが絶たれたと地団駄を踏むケジナン。
■そのカテズの近くで、シンシアは卵状のドミネーターごと空気ドームに収容され、アスハムの介抱を受けている。
シベ鉄総裁、キッズ・ムントがカテズに向かっているという。
シンシア「会えないよ…キッズ様には…もう、喜んでもらえないだろ…」
■バッハクロン、カーゴ。
キングゲイナーの傷をチェックするコナ以下整備班。
「服」を脱がして露になったマッスルエンジンからは、血のようなオイルが流れている。
一方パイロットのゲイナーは、ちょうどペルファの手術が終わったところだ。
ベッドで眠るゲイナーをサラとアナ姫が見守る。
アナ姫「マンモとリンクスを貸してあげていい?」
サラ「え…ああ、いいわよ」
アナ姫「よく寝られるよ」
サラ「足下のほうへね」
アナ姫「うん」
キングゲイナーの修理を手伝おうとするアデットだが、コナたちに邪魔だと言われる。
アデット「ゲイナーが怪我をしてるんだぞ、何かやってなきゃ気が晴れないんだよ!」
コナ「なら、宿題の採点でもしたら? 6回分はたまってんだろ?」
アデット「そんなガキ相手のことやってられっか〜! も〜!」
アデットはそのまま走って出て行く。
ゲイン「何しに行くの」
アデット「生徒の宿題の採点をやる!」
ゲイン「(サラに)シベ鉄の変型オーバーマンのパイロットとはゲーム友達だったんだ、ゲイナーは」
サラ「ええ。でもそういうことが気掛かりじゃないのよ」
ゲイン「キングゲイナーがその相手のオーバーマンを凍りつかせたことか?」
サラ「他にも妙なことがいっぱいあるわ。呼び寄せたみたいにブリザードはあるし、あのカテズの高価なネオンがいっせいに停電になるし…」
ゲイン「…」
サラ「街にあったシルエットマシンも、みんな動かなくなってしまったんですよ」
ゲイン「キングゲイナーには、アーリーオーバーマンのような力があるのかもな…」
サラ「え? あの、ブリュンヒルデみたいに?」
■空気ドーム。アスハムはジャボリにシンシアが逃げ出さないよう監視を強化しろと命令する。
アスハム「エサはまいたぞ、キッズ・ムント!」
アスハムがバイクで向かう先にはシベ鉄の列車が停車している。
何か企みがあるようだ。
■引きこもったシンシアの頭の中で、キッズの声が響く。
キッズ『お前が先祖から受け継いだ力は、いとしいものよ。強くなれるのだよお前は。シンシア。最高のオーバーマン乗りになって、私を喜ばせておくれ…』
■そのまま回想シーンに突入。
キッズ・ムントの本拠地、リマン・メガロポリスの屋敷か?
その背景に「アガトの結晶」が不気味に浮かんでいる。
屋敷の中でオーバーマン・バトルゲームをするシンシア。
次のシーンではオーバーマン、マッチョンによる実技訓練。
シンシアが勝ち進むたびに練習生が減っていく。
最後の一人になった(?)シンシアにキッズはシンシアの母の写真を渡す。
キッズ「母と子か…センスは争えんな…」
■そのキッズからもらった母の写真を見つめる今のシンシア。
シンシア「母さん、ゲイナ−だけだったんだよ、ゲームで何度戦っても、いなくならなかったのは。他のみんなは、あたしが勝つと順々に寄宿舎からいなくなっちゃうんだ」
写真をコックピットの棚に置くと、カテズでゲイナーとサラと一緒に写したホログラムの写真が映写される。
シンシア「み、みんな…あたしが消しちゃうの? ね、ゲイナー、サラ…くうぅっ」
■シンシアが泣くとコックピットの扉が閉まり、ドミネーターは赤く光り、空気ドームを飛び出す(したらしい)。
そのドミネーターがジャボリのドーベッグ隊の近くを飛び去ると、ドーベッグの機能が停止してしまう。ドミネーターもキングゲイナーと同じく、アーリーオーバーマン、オーバーデビルの眷属だからなのか?
ジャボリはそれがドミネーターだとは気づかないが、飛び去る時に音楽が聞こえたように感じる。
■ゲイナー「…音楽の夢…歌か…」
ゲイナーが体を動かすと足下のリンクスが目を覚まし、そのうちのリンスが偶然ホログラムの写真のスイッチを入れる。
ゲイナー「シンシア?…シンシアか…」
■修理が終わったキングゲイナーに乗り込むゲイナーとリンス。
他の2匹のリンクスはアナ姫を起こしに行く。
コナ「あんた寝てなくちゃいけないんだろ?」
ゲイナー「助けなくっちゃならない人がいるんだ」
ナン「また傷口が割れたらどうすんの。ゲイナ−、やめろ!」
ゲイナー「直してくれてすんません。止めたら承知しませんからね」
コナ「子供の、わからんちんが〜(?)」
(DVD2巻のブックレットによると、コナは27歳だそうです)
■偵察(?)に出ているアデットの赤いドーベッグとガウリ隊のパンサーたち。
アデットはドーベッグのハッチからガウリ隊の隊員たちに、手製のおにぎりを配っている。
アデット「おいしいかい?」
ガウリ「なんだな、アデットはいい女房になれるな」
アデットは赤くなり、コックピットに隠れて、
アデット「バ〜カ、照れるじゃないか」
■ゲインのエンペランザがやってくる。
ゲイン「静かすぎるのが気にならないか?」
ガウリ「別に」
アデット「お調子者のシベ鉄が動いてないよね」
ゲイン「それなんだよな…」
■ゲイナーをパンサーで追い掛けるサラとべロー。
サラの股の下でパンサーを動かすベロー…。
サラ「死ぬつもりなの!? あたしに相談もなく、勝手にさあ」
ゲイナー「か、勝手にったって…そういうんじゃないよ…サラ」
ベロー「きさまは〜っ、一人でシベ鉄に乗り込むつもりか!」
ゲイナー「どうして?」
サラ「アナ姫さんが教えてくれたのよ」
ゲイナー「リンスを連れて帰ってくれない、したら」
サラ「ゲイナー!」
ベロー「何考えてんだよ! あんな怪我をさせられた女のところに行くことはない!」
ゲイナー「シンシアは知らなかったんだよ。戦えば人は傷つくってこと。誰かがシンシアをそういう風に育てたんだ」
サラ「だから助けに行くの?」
ゲイナー「行ってあげなきゃ!」
サラ「ゲインが言ってたよ。キングゲイナーって、ブリュンヒルデのように、あたしたちの知らない力があるかもしれないって! こわくないの?」
ゲイナー「キングゲイナーのこいつが?…シンシアはゲームに勝ちたかっただけなんだ。教えてあげたいんだよ、良いことと悪いことを…」
ベロー「大丈夫なのかよ?」
ゲイナー「冬至の日の、一月ぐらい前だったんだ」
ベロー「冬至の前?」
サラ「その日って、何?」
ゲイナー「母さんと父さんたちが死んで、ネットでゲームだけをしていた一ヶ月間、シンシアが友達でいてくれたんだよ。だから、今度は、僕の番なんだ」
ベロー「わかった。お前はシベ鉄に乗り込め! 俺たちはゲインたちを呼んで来てやる。
けど、やばいと思ったら、逃げて来いよ!」
ゲイナ−「ベロー、ありがとう。リンス、アナ姫様には、僕がごめんなさいって言ってたって、伝えるんだよ」
ベローにリンスを渡すゲイナ−。代わりに、サラがキングゲイナーに乗り込む。
サラ「あたしは一緒に行くわ。(ベローに)ほうっておけないもの!」
ベロー「ん? そうなの? そうよねえ…い、行ってやって」
サラ「よろしくね」
ゲイナー「じゃ」
ベロー「ああ」
サラ「シンシアも…寂しかったのよ。あたしだって…ひとりぼっちだった時があるから、わかるわ。ふたりで、シンシアを迎えにいってやろ」
ゲイナ−「ありがとう、サラ」
■吹雪の中を走るキッズ・ムントのチェルノボーグ。
キッズ「フフフ…『アガトの結晶』がブリザードを呼ぶか…フフフ…」
■カテズでも吹雪が酷くなる。
ケジナン「なんて天気だ。急に変わりやがって」
エンゲ「天気予報は、こんな天気は言ってませんでしたよ」
ケジナン「あっ…来たぜ。レールの向こう」
エンゲ「聞こえませんよ」
ケジナン「キッズ様本当に出てきたんだよ」
エンゲ「カシマルがいなくなりゃ、ダイヤは好きにできるもんなあ」
しかし、レールの向こうから来たのはアデットとガウリ隊。
アデット「そこにいたのかい? ケジナン、エンゲ」
ケジナン・エンゲ「姐さんの声だぞ〜」
アデット「ドームポリスの中でやる気はないよ。出てきな。腰巾着め」
ガウリ「アデット、列車が来る気配があるぞ!」
アデット「チェルノボーグが来るか?」
ゲイン「キッズの専用列車ってのか」
■離れた別のシベ鉄の列車からそれを見るアスハム。
アスハム「フフフ、こちらの仕掛けに乗ってくれたか、キッズ・ムント総裁」
アスハムの後ろには毛長象の鼻が見える。
アイキャッチ
■シンシア、チェルノボーグを見て、
シンシア「あ、来てくれてる…私はもう…会えないよ…総裁」
ジャボリから戻れと通信が入るがシンシアは切る。
膝を抱えてうずくまるドミネーター。
■ゲイナーがシンシアを見つける。
■カテズの前ではケジナンらシベ鉄とガウリ隊が戦闘している。
ケジナン「姐さんには死んでもらいますよ! 総裁の前でこれ以上ヤーパンの連中をのさばらせておくわけにはいかないんです! それとも、お嫁に来てくれますかあっ!」
アデット「他のことが言えないのかい! あたしに適う男にも、なれないくせして!」
■ゲインはエンペランザのライフルでチェルノボーグを撃つが、
ゲイン「ん!? バリア? キッズがチェルノボーグで来たのは、本当にヤーパンの天井を止めるためらしい」
ゲインが上方を見ると、ドミネーターに似たオーバーマンが2体光って浮かんでいる。
■それに反応しているシンシアのドミネーター。
キングゲイナーが降りてくる。
ゲイナー「待ってよシンシア。(ドミネーターの動きが止まる)待ってくれてありがとう」
サラ「いいの? ゲイナー」
ゲイナー「シンシア、僕の怪我はたいしたことなかった。平気だ」
サラ「逃げないで、シンシア。話を聞いてほしいのよ。その態度で、あなたがどれほどつらい思いをしているかわかります。シンシア?」
ゲイナー「僕はシンシアが好きだよ。いっしょにヤーパンまで旅をしようよ。サラには悪いけど、僕には『エクソダス』がすべてだと思えなくなってる」
サラ「それでいいのよ、ゲイナ−君」
ゲイナー「シンシアだって同じだよ。シベ鉄だけが君の生きる場所ではないはずだ」
ドミネーターは卵状に戻り、コックピットが開く。
シンシア「どうして!?」
ゲイナー「シンシア…」
サラ「どうしてって…」
シンシア「あたしはキッズ様に育てられた。母もそうだったかもしれないのよ。来る日も来る日もゲームで戦って、勝ち続けて、実践訓練でも勝ち続けて、それでオーバーマン乗りになれて、愛されてきた。だから、キッズ様を裏切れないよ。いまさら…裏切れないよ」
涙を流すシンシア。
サラはシンシアに近づいて、
サラ「あなたにとっては、シベリア鉄道の総裁は、お父さん以上の人なんだね…」
■匍匐前進(!)をするドーベッグの中で、キングゲイナーに狙いをつけるジャボリ。
ジャボリ、ドーベッグの主砲を撃つ。
直前で気づいたゲイナーはフォトンマットリングでそれを防ぐ。
■ドミネーターに似たオーバーマン2体が降りてくる。
シンシア「あれは、ドミネーターをベースにした、『ブラックドミ』じゃないか。キッズ様の親衛隊が、動きだしたの?」
サラを収容して逃げるキングゲイナーだが、ジャボリのドーベッグ、ブラックドミ双方から攻撃を受ける。シンシアはキングゲイナーのもとへ行こうとするが、ブラックドミが邪魔をする。
■カテズの戦闘に毛長象の群れが入ってくる。
ガウリ「暴れ毛長象の群れ? あれ撃ち殺せないぞ!」
ゲイン「いや、あれ暴れてない。コントロールされている」
毛長象の一頭にアスハムが乗っている。
アスハム「ハハハッ、新しいオーバーマンを手に入れたようだな、ゲイン・ビジョウ!女たらしよ!」
ゲイン「アスハム! シベ鉄に潜り込んだのは本当だったのか。その格好、都落ちは貴様の趣味じゃないだろうに!」
アスハム「お前に天罰を与えるためなら、悪魔にでも魂を売るというだけだ!」
ゲイン「それで毛長象を使うなら、狙撃する!」
アスハム、毛長象の群れを突進させる。
ゲイン「くうっ、保護動物を盾にして!」
アスハム「そういうことで使っちゃいないよ! まだ気づかないのか、お前もキッズも、すでに棺桶に足を突っ込んでいるのを!」
ゲイン「棺桶と言ったか!」
アスハム「そおう、棺桶だ!」
毛長象の群れはカテズに向かって行く。
ゲイン「ガウリ、止めるな!」
ガウリ「原生林の方だ! あの光、妙だ!」
ゲイン「確かに…オーバーマン3体?」
キングゲイナーに近づこうとするドミネーターを、ブラックドミが押さえつける。
シンシア「キングゲイナーは?…キッズ様…」
シンシアの頭の中でキッズの声が響く。
キッズ『どこに行くのだ? シンシア。お前には祖母と母から受け継いだセンスがあるんだよ。だから私はお前を宝のように育てた。お前が私の娘だという証しを、私を邪魔する者どもを片付けて、みせておくれ』
シンシア「でも…」
キングゲイナーはブラックドミの攻撃を受けている。
シンシア「待って、ゲイナ−!」
キッズ『私の願いを叶えてくれないのかな? シンシア…』
シンシア「そんな…そんな…」
苦しむドミネーター。
■ゲイナー「シンシアが近くにいるから、あの2体を排除できない!」
サラ「逃げてみせて、シンシアだけにする!」
ゲイナ−「そうかっ」
案の定、ブラックドミはキングゲイナーを追い、稲妻のようなものを放ってくる。
ブラックドミの稲妻の直撃を受けるキングゲイナー
ゲイナー「死ぬわけにいくか! シンシアを、シンシアを、迎えに行くんだ!」
■ゲインたちを狙って、チェルノボーグは砲撃してくる。ケジナンとエンゲがいるにもかかわらず。
ゲインはライフルを撃つが、相変わらずチェルノボーグはフォトンマットをバリアにしているので
ダメージを与えられない。
■アスハム「シンシア殿の猛攻を受けたときに、あの髪の毛のオーバーマンは、オーバースキルを使った。それが、あの大変動を起こした氷の力と繋がるのかどうか…キッズ、貴様が隠し持っているオーバーマンの秘密も、暴いてみせてやるぞ! キッズ・ムントオオオオオ!」
■ゲイナー「みんな殺されるもんかっ! 死にたくない! シンシア? あ…」
ゲイナーの前に豚鼻のオーバーマン(オーバーデビル?)のイメージが現われ、消える。
その直後、キングゲイナ−が発光する。
■ブラックドミは稲妻を放てなくなる。
チェルノボーグも止まり、カテズも停電し、ケジナンやガウリ隊のシルエットマシンも機能が停止する。
アスハム「やはりな。あのオーバーマンは、ブリュンヒルデと同じオーバーデビルの仲間じゃないか。
伝説の通りだとするとおそろしいぞお〜」
何故か嬉しそうなアスハム。
ゲイン「アーリーオーバーマンの秘密は、おとぎ話じゃなかったのか。
アスハムはこれを知っていたから、シルエットマシンに乗らなかった…」
アデット「ゲイン、エンペランザの左手!」
エンペランザの左腕、ブリュンヒルデの腕が反応して発光している。
ゲイン「こいつも同類か…」
■ゲイナー、シンシアを見つけて、
ゲイナー「シンシア…間違い…ない…」
サラ「え? ゲイナー、どうしたの?」
ゲイナー「な…に…」
ゲイナーは何かにとりつかれたようになっている。
サラ「あなたとても冷たいよ」
ゲイナ−「ぼく…が…?」
サラ「…ああっ」
しかし、サラは空に何かが浮かんでいるのに気づく。
そこから出てきたブラックドミのようなもの3体にシンシアのドミネーターが回収されていく。
キングゲイナーはシンシアを助けようとする。
サラ「目の前にあるものが何かわからないのよ。うかつに出て何ができるの!」
ゲイナ−「シンシアが…行っちゃう…じゃ…ないか…」
サラ「でも、あれ…」
■アデット「キッズの移動要塞だ。リマン・メガロポリスに、固定されてるはずの」
ゲイン「要塞!?」
アデット「『アガトの結晶』っていう…」

作監の下井草伊井乃弼氏って誰だ?とか当時話題になりましたけど、結局誰だったんでしょうね(笑)。