第17話 『ウソのない世界』(2003/01/18放送)

脚本/大河内一楼
コンテ/斧谷稔
演出/五十嵐達也
作監重田敦司

■ゲイナー・サンガの前回のあらすじ。
「アデット先生は難民たちと自警団を作るつもりで、シルエットマシンの調達に向かった。シベリア鉄道の秘密基地へだ。半分は幻にだまされて迷い込んだってほうなんだけど、さすが元シベ鉄。幻を相手に戦う気分を、僕はアデット先生からもらうことができた。それは素晴らしい…ことかなあ?」
■ベローたちがガンガランの難民に食事の配給をしている。
そこへ謎の波動が。
ベロー『やっかいなもの抱え込んじまったなあ、俺たちヤーパンの食料も足りないっていうのによ〜』
難民「俺たちが厄介者だと言ったな?」
ベロー「え? 俺が言った?」
■アナ姫も手伝っているし、配給を待つ列にはアデット隊長とアデット隊の者たちがいる。
■リュボフとママドゥは皿や鍋の片付け、ゲイナーとサラは食器を洗っている。
サラを見るゲイナーの視線が、富野コンテの恒例でまたしてもエロい(笑
そこに波動が。
ゲイナー『サラって、けっこう凄いんだ。着やせするタイプなんだよな』
その「心の声」はサラに聞こえてしまう。
サラ「ゲイナー君!」
ゲイナー「え?」
サラ「やらしい」
ゲイナー「な、なんでだよ」
サラ「『サラって、けっこう凄いんだ。着やせするタイプだな』〜?」
ゲイナー「そ、そのまんま!?」
サラ「わかっちゃう」
■ガンガランの難民『お前らヤーパンが来たから、俺たちがガンガランに住めなくなったんじゃないか。この厄病神ども』
ゲイナー「何かもめ事なんですか?」
サラ「話をそらさないでよ!」
ゲイナー「聞こえないの? 心の声のようなものが。みんなが思ってる本音ってやつだよ、これ」
サラ「それが聞こえているのね」
二人は恐怖を感じて、思わず手を握り合う。
■ガンガランの難民「ヤーパンのやつらに思い知らせてやれ!」
ベロー「ガンガランのやつらなんか、面倒みることなんかねえぞ!」
もめ事はいさかいにまで発展する。
戸惑うアデット隊の連中。
アデットはスプーンを掲げて、
アデット「ガンガランの連中を守るのがアデット隊の任務だろ、アデット隊は臆せず、前に出る!」
■「心の声」を露にする波動は、シベ鉄の列車の方から出ていた。
そしてそれは、新オーバーマン、プラネッタのオーバースキルの波動だった。
■プラネッタのコックピットで不敵に笑うカシマル・バーレ。
側にジャボリがいる。
カシマル「オーバーマン・プラネッタで作戦やるって言ったって、あの人笑ってずうっと座っていただけじゃない」
心を読まれて驚くジャボリ。
カシマル「このオーバーマン・プラネッタのオーバースキルは表層意識を声にしてまわりに解放します。そうすっと、その人サッパリするのよね、わかる?」
意味がわからないジャボリ。
カシマル「説明しましょうかね。善意の嘘も汚い騙しもささやかな秘密も、すべてさらけだしてあげるのよ! そうするとどうなると思う? 『ヤーパンの天井』は数日のうちに仲間割れを起こして、空中分解するのですよ!」
ジャボリ「はあ…」
■ガンガラン、ヤーパン、それぞれ陣地を作り、石を投げあっている。
陣地には「居食衣」という意味不明の看板。
アデット以下アデット隊はガンガラン側に付いている。
両者のあいだに位置する橋の上でリュボフが争いを憂いでいる。
■ママドゥがカバンを盾に飛び交う石からリュボフを守る。
その二人にもプラネッタのオーバースキルは作用する。
ママドゥ『まずい〜っ、これを知られてはならない!自分がこの方に恋しているなどと。親子ほど年が違うんだぞ。リュボフさんは迷惑だと…』
リュボフ『想われる重さ(?)が迷惑などと…』
ママドゥ『それこそ、恋の想いを…』
お互い瞳にハートマークが揺れる。
■ラブラブ状態のママドゥとリュボフの上にキングゲイナーが飛来する。
ゲイナーが争いを止めようとする。
■ガウリ「どうなってるんだ、あっちこっちで」
サラ「心の中で考えてることが、聞こえちゃうのよ。だから、難民とヤーパンの不平不満が、爆発しちゃったんですよ」
ガウリ「本心がわかるのって、穏やかじゃないものな」
サラ「そうですよね」
ガウリ「うん? 敵のオーバースキルか?」
サラ「そうでしょうね。心の中で考えてることが聞こえる限り、完全には収まりませんよ」
ガウリ「暴動は力づくで収めるさ。多少の犠牲はやむを得ない」
サラ「そんな」
ガウリ「『エクソダス』は犠牲なしで成し遂げられるほど小さなことじゃないんだ」
ガウリ『これまでだって、俺はずっと、そうしてきた。同じヤーパンですら俺は…』
サラ「ええっ!? そんな…本当なんですか?」
ガウリ「う…聞いたのか、俺が考えたこと…」
サラ「ゲイナー君の両親も、隊長が!?」
■五賢人のシトランとガッハ、それにゲイン。
シトラン「嘘やお世辞というオブラートを取り去れば、争いになるのは道理ですからねえ。請負人、あなたに依頼したのはヤーパンの『エクソダス』です」
ゲイン「ガンガランのピープルを捨てちゃえっておっしゃるか。(シトランの心の声が聞こえて)所詮俺も雇われの身か。拒めば俺も切る気ですか?」
シトラン「空耳でござんしょ」
ゲイン「切らさせはしませんよ、俺もガンガランのピープルも」
シトラン「策はおありでおじゃるのかい?」
ゲイン「元凶を叩けばいいのさ」
■ゲインが部屋を出ると、ゲイナーとアナ姫がいる。
そこへ波動が。三人はお互いが考えてることがわかり、
ゲイナー「わかりました。それで行きましょう」
ゲイン「心の声が聞こえるっていうのは、なかなか便利じゃないか。ね、姫様」
アナ姫「そうですよ! 寂しくなくって楽しいですもの。でも無茶は駄目です。相手の心を読んで戦えば、どんぱちどん、ってやらないで勝てるんですから」
ゲイン・ゲイナー「御意! アナ・メダイユ姫様」
■シベ鉄の施設を攻撃し、ダイヤを乱すことで事の張本人のカシマル・バーレをおびき出そうとする、ゲインとゲイナー。
アイキャッチ
■攻撃も一段落し、カシマルがやってくるのを待つゲインとゲイナー。
ゲインは静かにエスニック風の笛を吹いている。
ゲイン「聞こえるか。こいつをこんな土地で吹くなんてな…俺はまだエクソダスをしている。あのフェリーベ公爵家を潰した、『エクソダス』だ」
ゲイナー「フェリーベ…公爵家?」
ゲイン「いい耳をしているな」
ゲイナー「ゲインさんだって。フェリーベ公爵家って、どこのドームポリスなんです?」
ゲイン「ずっと南だ。赤道の向こうにあった」
ゲイナー「ボルシチがあったんです。食べますよね」
ゲイン「気が効くな」
ゲイナー「そこって砂漠なんでしょ?」
ゲイン「砂漠っていうのは、とても清潔だっていうの、知っているか?」
ゲイナー「へえ、暑いのに? シベリアだってクリーンですよ。土地とか、気候風土は」
ゲイン「そうだな。人間のやることがクリーンじゃないんだよな」
赤道の向こうのドームポリス。それが“ウッブス”のことか? ゲインの故郷?
■ダイヤのチェックをしながら、カシマルはオーバーマン、プラネッタでやってくる。
■ゲインの砲撃をことごとくかわすプラネッタ。
ゲイナーが驚いているその時にはすでにプラネッタに捕捉され、キングゲイナーに電磁ムチを放ってくる。
■逃げるキングゲイナー。外したかとばかり両手の指を鳴らすカシマル。
■ゲイナーはキングゲイナーのスピードを上げ、プラネッタのまわりをまわり、分身を作る。
ゲイナー「キングゲイナーのスピードには、ついて来られないと見た。後ろからなら、真っ向空竹割り!」
■しかし、それは外されてしまう。それどころか逆にキングゲイナーがプラネッタのムチでダメージを受ける。
カシマル「どちらにかわそうとしているかって気分も聞こえちゃうんですよねえ」
ゲイン「キングゲイナーを追ったんじゃない。ありゃ、始めから狙っていた。退くぞ、ゲイナー!」
ゲイナー「どうしてです! 今なら1対2だ、チャンスじゃないですか!」
ゲイン「奴は我々の心の声を聞いているんだ! 攻撃も防御も、相手に筒抜けなんだぞ!」
ゲイナー「心の声!?」
■撤退だというゲイン。
カシマル「さすが黒いサザンクロスは理解が早い。よもや私の心は読んではいまい…」
■ヤーパンの天井。
難民の暴動は収まる気配がない。
サラはゲイナーの両親のことが気になり、ウソがつけない状況を利用してガウリに聞こうとする。
■慌てふためく五賢人のマンマンはアナ姫と鉢合わせる。
マンマン「聞かないでください。本心など聞かないで」
アナ姫「誰だってお母さんは好きでしょう? それは変なことではないでしょう?お母さんにお耳の掃除をしてもらいたいってずうっと思っていたのなら、あたしがしてあげます」
マンマン「ア、ア、アナ姫様ったら、いじわる」
アナ姫「嬉しいって言葉知らないんですか、五賢人のくせに。チョメ!」
キングゲイナーに接近しすぎ、フォトンマットリングに吹っ飛ばされるプラネッタ。
カシマル「しまった、正面から攻めすぎた」
ゲイナー「考えてることが筒抜けじゃ勝てないなんてこと、ない!」
ゲイナー、お前何をする気だ(笑
■再びラブラブのママドゥとリュボフ。
ママドゥ「…女史殿」
リュボフ「それはもう、でも私つい、父と比べてしまって、いいえ、でもママドゥさんが素敵な殿方だとわかっています。けど、私の心も揺れて…もう少し時間をくださいませ!」
ママドゥ「あ〜っ、それはわかります。ですがリュボフ女史、自分の偽りのない気持ちも、お分かりいただいていると信じたいのですがぁ〜」
リュボフ「それはもう、愛の試練に耐える喜び、乙女の幸せです! 
ぜ、ぜ、全身全霊でお答えしたいのですから、もう少しだけ、お時間を…」
と、ママドゥがリュボフを抱き締めようと体を反らした瞬間、ママドゥの胸に頭を付けていたリュボフは支えを失って転んでしまう。
ママドゥ「リュ、リュボフ女史!…リュボフ…さん」
ママドゥは倒れたリュボフの体に自分の体を重ねて…あとはよくわからん。
一線越えたか、リュボフとママドゥ。
■ゲイナー「そうだ! どうせ聞こえるなら、聞かせてやるさ!」
ゲイナー、体育祭の時のチアリーダー姿のサラの写真を掲げて叫ぶ!
カシマル、ゲイナーの心の声に苦しむ。
ゲイナー『サラ!  好きだぁー! サラ! 愛しているんだ! サラぁー!』
カシマル「うおおおおっ」
ゲイン「なんだ!?」
■ゲイナー『エクソダスをする前から好きだったんだ! 好きなんてもんじゃない! サラの事はもっと知りたいんだ! サラの事はみんな、ぜ〜んぶ知っておきたい!』
カシマル「なんですかこの小僧は! 私たちは今戦っているのですよ!」
ゲイナー『サラを抱き締めたいんだ! 潰しちゃうくらい抱きしめたい!』
■告白ポーズのキングゲイナー。「顔」の部分にハートマーク!
ゲイナー『心の声は、心の叫びでかき消してやる! サラッ! 好きだぁぁぁ〜! サラッ! 愛しているんだよ!』
■ゲイナーの告白は「ヤーパンの天井」の方まで聞こえている。
ゲイナー『僕のこの心のうちの叫びを聞いてくれ! サラさん! クラスが同じになってから、サラを知ってから、僕は君の虜になってしまったんだ! 愛してるってこと! 好きだってこと! 僕に振り向いて!』
「ゲイナーのバカだよ、この声は」
「若けぇのが愛の告白しとんのか?」
「あたしもこう言ってくれてればねえ」
「世界中の人間に言ったってなあ」
「いいじゃないですか、お金がかかる(?)わけじゃないし」
■ゲイナー『サラが僕に振り向いてくれれば、僕はこんなに苦しまなくったって済むんです。 優しい君なら、僕の心のうちを知ってくれて、僕に応えてくれるでしょう』
マンマン「この声、ゲイナー君ですか?」
アナ姫「ええ、ようやく告白しているみたいですね」
ベロー「あーっ、テメー、立派じゃねえか!」
■ゲイナー『僕は君を僕のものにしたいんだ! その美しい心と美しいすべてを! 誰が邪魔をしようとも奪ってみせる! 恋敵がいるなら、今すぐ出てこい!相手になってやる!』
ガウリ「奪ってみせるとはよくも言ったな」
サラ「バカ〜っ! あのバカ〜、何てこと怒鳴ってるんだぁ〜?」
ゲイナー『でもサラさんが僕の愛に応えてくれれば戦いません。僕は、サラを抱きしめるだけです! 君の心の奥底にまで、キスをします! 』
「あれがサラだろ」
「幸せになって〜」
「いっぱいキスしてもらえよ〜」
「あんたもちゃんとやんだよ〜」
まわりから注目され、顔を真っ赤にして走るサラ。
■ゲイナー『力一杯のキスをどこにもここにもしてみせます! キスだけじゃない! 心から君に尽くします! それが僕の喜びなんだから』
カシマル「ええ〜い! 青春だからってたいがいにしなさい! そうか、こちらのオーバースキルをカットすればいいんだ」
ゲイナー『喜びを分かち合えるのなら、もっと深いキスを、』
カシマル「いや〜はは〜っ、これでシリアスに戦いができる。と…黒いサザンクロスの声が…聞こえません」
■ゲイン「悪いが、今だね」
ゲイン、撃つ! プラネッタの頭部に命中!
ゲイン「ゲイナー! 今だ!」
ゲイナー「了解! キングゲイナー!」
キングゲイナー、プラネッタをたたっ斬る。
■カシマル「き、聞こえません…外の様子が聞こえません…うわあ、髪の毛のお化け!ふん、こんなところで死ねませんよ〜」
コックピットがそのまま脱出ポッドになり、プラネッタ本体から分離。
カシマル「ゲイナー・サンガ! あなたはブラックリスト入りしましたからねええ!」
■ゲイナー「あのムチ、効いたぞ」
ゲイン「ムチをくらいすぎたのか?」
ゲイナー「…なんです?」
ゲイン「ゲイナー、俺、今まで隠していたけどな」
ゲイナー「はい?」
ゲイン「俺、お前のこと大好きなんだな」
ゲイナー「…ゲイン! 人をからかって!」
ゲイン「本当だって! からかっちゃいないぞぉ〜!」
そう言ってゲインはガチコで走り去っていく。
ゲイナー「僕は間違っちゃいませんよ!〜ったく…」
■ヤーパンの天井。
バッハクロンに帰艦するキングゲイナー
下ではサラを中心とする面々が待ち構えている。
ゲイナーが降りてくる。
笑いをこらえるコナ。
ベロー「おめーは、スゲーよ、全く。ご尊敬ー申し上げっからよ」
ゲイナー「あ…うん」
そしてゲイナーとサラが目が合ったところに、
アナ姫「みんな聞いてるんだよ、ゲイナー。
エクソダスする前からずうっと好きだったんだ! サラのこと抱きしめていっぱいキスをする!」
ゲイナー「ええっ!? サ、サラ、まさか…」
ゲイン「あのオーバースキルが効いてる時だ。恥ずかしいくらい世界中に叫んでしまったんだぞ、ゲイナー君」
ゲイナー「そ、そ、それが本当なら、サ、サラがここにいるわけないよね…ふつう…」
サラ「う〜ん、あ〜なたの根性なら、あたしがいなかったらヤーパンの天井を走り回って、サラはどこ? サラはどこ行ったの? キスさせて、キスしようよ、抱きしめてやるからって、探しまわるんでしょ!? そういう恥ずかしいことをさせたくないから、恥を忍んで待っていたの!め〜で、しょ!」(←アナ姫の「めっ!」と同じか?)
サラ、ゲイナーを殴ろうとするが、
ゲイナーが「ごめんなさいっ!」と、頭を下げたので、
サラは「あわわわわわわわっ」と、殴ろうとした勢いが空回りして、倒れてしまう。
ゲイナー「サ、サラ!」
ゲイン「今は動かすな。すぐに起きられるよ」
ゲイナー「あ、はい…」
■そんなゲイナーたちのお馬鹿なやりとりを、ひとりシリアスに見つめるヒューズ・ガウリなのであった。