「Gのレコンギスタ」第1話冒頭10分映像所感

「動体視力は宇宙で作業するための必殺兵器だ!」
まず驚くのが富野ガンダムにしてはくどいくらいの「ミノフスキー粒子」の丁寧な説明。レーダー無効化というファーストガンダム以来の最も基本的な点から、少々分かりにくいがそのもはや魔法レベルと言ってもいい応用であるミノフスキー・クラフト、そしてキャピタル・タワーの構造維持にも関係しているらしい点。

宇宙世紀についての言及もあり、「∀ガンダム」の時代ほど遠くはないが、宇宙世紀には近い時代(リギルド・センチュリー)の印象付け。その意味では作品のルックスとしては比較的「ガンダム」寄りである。それに比べれば(今にして思えば)「∀ガンダム」1話は「ガンダムシリーズ」の中に位置付けるにはかなり過激だったんだなあ、と思う(ガンダム好きではなく富野好きの自分には当時そんなに「過激」には映らなかった)。また「Vガンダム」の時の陰鬱で惰性で不親切な描写からすれば今回の状況説明は、結構「ガンダム世界」を知らない人にも気を遣ったやさしい、丁寧なアプローチである。

その丁寧な状況説明のアプローチも、ただ本編とは別の解説映像で説明するのではなくて、本編中でしかもわずか10分足らずで示している。富野ガンダムでは宇宙と地上を行き来することが多いが、今作の設定面の一番のアイコンとなっている軌道エレベータのシンプルな構造、宇宙と地球を繋ぐ「へその緒」のイメージを加味していることもあってか、宇宙から始まり地上の文化を見せ(宗教描写)再びカメラが軌道エレベータに乗るように宇宙へ行く。その上下構造にマッチするかのようなコンテワークで状況説明やキャラ紹介をこなす。これはコロニー時代のガンダム世界よりもシンプルである。最近の、冒頭10分程度の先行配信という宣伝の仕方にもちゃんとよくはまっている。

キングゲイナー」は暗い過去を持ちながら、キャラクターがバカをやる話だったが、「G-レコ」は脱ガンダムを目指しながらいわゆる「ガンダム」要素がこの冒頭10分だけでも意外にも多いと感じたので、全体的に明るいとは思うが、それほど脳天気なものでもないのかもしれない。

今回の「ミノフスキー粒子」の強調で、同じく富野監督の小説(「ブレンパワード」直前くらいの時期)、「アベニールをさがして」を思い出す。直接的なガンダム世界の話ではないが、はっきりと「ミノフスキー粒子」が存在する世界で、スペースコロニーが建造中の、いわば別世界線の「宇宙世紀」前夜とも読める世界。小説自体は話が進むほどグダグダになってしまうのだけれど、富野監督による「宇宙世紀」前夜の映像化は観たいと思っていた。あれから年月が経ち、「ガンダムUC」でその時代についてひとつの解釈として触れられたし、ファーストガンダム以降増殖しガチガチに固められた公式設定の中ではより「ガンダム」に縛られてしまうだろうから、まだ自由に無茶が出来る(「ガンダム」ではなく「アニメ」として)宇宙世紀以後の方がいいのだろうな、と思った。

キャラ作画に関して。個人的に富野監督のラフ絵を生かした吉田健一さん絵、といった印象だったのだが、あくまで印象なので劇場限定BDがもし手に入れば、特典の1話コンテで確かめたいところ。