第22話『アガトの結晶』(2003/02/22放送)

脚本/浅川美也
コンテ・演出/笹木信作
作監吉田健一中田栄治

■ゲイナー・サンガの前回のあらすじ。
「不思議なことが起こり続けていると思えた。オーバーマンを操るシンシアとの出会いと、彼女の苦しみ。それは、ただ一人の少女の身の上話ではないのではないか。そう感じるのは、サラも同じだろう。そんな僕らの前に、さらに巨大なオーバースキルを孕むものが、雲の上から現われてきた」
■ドームポリス、カテズ上空に現われる「アガトの結晶」。
騒ぐピープルたちの中、ルブルがミイヤを探している。
その当のミイヤ・ラウジンは煙突のようなものの上に乗って、「アガトの結晶」の姿に驚嘆している。
■「アガトの結晶」内部。シンシアのドミネーターが引きこもっている。
そこへ浮かぶイスに座ったキッズ・ムントがやってくる。
思わず隠れるシンシア。顔を見せてくれというキッズにシンシアは謝る。
もうオーバーマンには乗れないとシンシア。
キッズ「今は気にすることはない。誰にでも調子が悪い時はある。後のことは、私に任せておきなさい」
シンシア『ええっ!? キッズ様はアガトの結晶で、攻撃することを考えているの?』
キッズ「すぐに終わらせるから、心配しなくてもいいのだ。ゆっくり休みを取りなさい」
キッズ去る。
シンシア「ああ…どうしよう…ゲイナ−たちがいる…どうしたらいいの?どうしよう…どうしよう…はっ、どうしようって…どうすることもできないじゃない…あたし…」
■「ヤーパンの天井」のユニット群上空に近づく、「アガトの結晶」。
キッズ「愚かな『ヤーパンの天井』の者どもよ! これより『アガトの結晶』で制裁を加える! 覚悟せい!」
キッズ「くらえ! アガト・グラビティィィ!」
って、ただ「アガトの結晶」でユニット押しつぶしてるだけ!(笑
ユニットから逃げまどうピープルたちの作画が細かい。
ゲイン「なにがアガト・グラビティだ。むっ、キングゲイナー? どこへ行くつもりだ!」
キングゲイナーは「アガトの結晶」に接近する。コックピットにはゲイナーだけでなくサラもいる。
■ゲイナー「あの、水晶のお化けの、コントロールが出来ればいいんですよ!」
ゲイン「それだけのためにそのアガトとかいうのに上がるのか」
ゲイナー「なに!?」
ゲイン「シンシアって女の子が気になるんじゃないのか?」
サラ「その子は、オーバーマン乗りなんです。保護する必要はあります。ゲイナー君はそう考えています」
ゲイナー「…サラ」
ゲイン「今回の戦いの異常は、みんなあいつのせいだ。ということは、何が起こるかわからんのだぞ、ゲイナー!」
■「アガトの結晶」内部に入るキングゲイナー
そこは一面に氷が広がっているものの、下部には水が溜っている。
サラ「ここがシベ鉄の本社だなんてこと、ないわよね」
ゲイナー「『アガトの結晶』って、人が作ったものじゃないのか?」
サラ「クシュッ(くしゃみをして)なんか、変な冷気が来てない?ここ、キングゲイナーのコックピットなのに…」
ゲイナー「でも、本当に寒いっていうなら、水面は凍ってなくっちゃいけないのに、液体のままだ」
サラ「あの水、どっから流れてくるのかしら…」
■その時、キングゲイナーは背後からケジナンとエンゲの乗ったドーベッグの攻撃を受ける。
ケジナン「シベ鉄本社に乗り込むとはいい度胸じゃねえか!」
エンゲ「こんなことがなきゃ俺たちだって近づけねえところをよ!」
ケジナン「叶わねえまでも、本社の入り口の守りはキッズ様にアピールを…」
しかし、そのドーベッグはゲインの攻撃を受ける。
ゲイナー「ゲイン!」
ゲイン「まだこんなところにいたのかゲイナ−! さっさとお姫さまを助けないと…」
さらにゲインのエンペランザも背後からブラックドミの攻撃を受ける。
フォトンマットリングでガードしたキングゲイナーに守られてエンペランザが先に「アガトの水晶」内部へ。
ゲイン「『アガトの結晶』は、凍らせるオーバースキルの力そのもので出来あがっていいるのか…それを操るものがいるって…(キングゲイナーがエンペランザを追い越して)待てゲイナー、それ以上奥へは…ちっ」
ブラックドミに追われながら、「アガトの結晶」奥深くへと入って行くキングゲイナーとエンペランザ。
■水面からゴレームが現われ、ゲインたちを見送るアスハム。
アスハム「フフフ…わざわざ私のオトリになりに来てくれるとは、たっぷり暴れて、注意を引き付けるがいい!」
再び潜り、水中を進むゴレーム。
アスハム「一目でこの建造物の性格を見抜いたのは誉めてやるが、『アガトの結晶』の核が、伝説のオーバーデビルであることを、最後まで知ることはないよな。手に入れるのは私だから。カシマルに近づいたおかげで、マップをいただけたんでな」
そう言ってマップをいじると、突然コンソールが光る。
アスハム「なに!? なんだ? このマップのナビシステムが? 私の見ている幻か?」
モニター前面に人型らしき光が現われる。
アスハム「オーバーデビルの光?…そうなのか…私を、呼んでいるのだな」
■ブラックドミ部隊と、キングゲイナー、エンペランザの激しいバトル。
ゲイナ−とゲインはブラックドミ全機を倒す。
ゲイン「潮時だ。退くぞ、ゲイナ−!」
ゲイナー「冗談でしょ、まだシンシアを!」
ゲイン「ばかやろう! その女がどこにいるのか分かってるのか。今度キングゲイナーが暴走したら…」
言ってる側からキングゲイナーの機体が光る。
ゲイナー「コントロールが…効かない!」
エンペランザの、ブリュンヒルデの腕もそれに反応して光る。
ゲイン「ゲイナ−、エンペランザもか」
その時、氷の地面から光の柱がいくつも伸び、キングゲイナーはそれに包まれてしまう。
■「ヤーパンの天井」のユニットの一つを、「アガトの結晶」はついに押しつぶしてしまう。
アナ姫、モニターでそれを見て、
アナ姫「これが、鉄道王のやることですか?」
それにキッズ・ムントがモニター越しに返す。
キッズ「鉄道王だからこそできるのだよ。これでおわかりかな? レールから外れて移動するとは、決して許されないことなのだ」
シトラン「何の交渉もなく、いきなりユニット一基を潰す方こそ非道!」
キッズ「誰が一基と言った? フフフ…」
しかし、キッズの見ていたモニターに「結晶」内部の様子が映り、
キッズ「馬鹿な! オーバーデビルの部品が活性化しているぞ!」
■異常を感じて「結晶」内部をドミネーターで歩くシンシア。
その前にゲインのエンペランザが降りてくる。
シンシア「誰あなた。いったい何が起こっているの?」
ゲイン「ゲイナ−・サンガに頼まれて、シンシア・レーンという少女を探している者だ」
シンシア「ゲイナーが? どうして?」
ゲイン「君を助けに、『アガトの結晶』に来てるんだ」
シンシア「ええっ、ゲイナーが…あたしの…ために…?」
が、ドミネーターの足下からオーバーデビルの光の柱が立ち上がり、ドミネーターをさらって行く。
ゲイン「今度は逃がさん!」
ゲインはそれを追う。
■ゴレームのまわりを囲むかのように、モニター全面にオーバーデビルの光るパーツ群が映っている。
アスハム「これらすべて、オーバーデビルのパーツの一部にすぎないというのか。まるで流星群を従えているよう…(目の前のパーツを見て)オーバーデビルの核か…遠いところまで来たものだ…ロンドンからも…カリンからも…」
すると、目の前のオーバーデビルの光るパーツがカリンの姿に変わる。
アスハム「カリン! くっ、オーバーデビルめ! 私の心を読んだのか!ふっ、ふふっ…そうだ…そうだよ…オーバーデビル。私が心底求めながらも永遠に失ったのは、そのカリンの笑顔だ。それが私の弱点と思ってるのか?それで私を操れると思っているのか? 卑しいヤツめ。ハッ、悪魔などは自分の欲望のためには、人間の欲望を利用することしかできないのだからな。(パーツが化けたカリンの顔から笑みが消える)しかし! 私は! 私自らの王となるために! お前のすべてを手に入れる!」
■オーバーデビルの光のパーツにキングゲイナーも運ばれていく。
ゲイナー「すごいスピードに感じるけど、普通の空間じゃない。サラ、大丈夫?」
サラ「さ、寒くない?」
ゲイナー「う、うん」
サラ「この光…キングゲイナーの力と関係あるのかな」
ゲイナー「あると思うよ」
サラ「怖くないの? キングゲイナーだって、あたしたちの理解を超えるものを持っているのよ」
ゲイナー「いまは平気だ。誰かを守りたいって思うと怖さって…消えるみたいだ」
サラ「…シンシア?」
ゲイナー「サラだよ。いまここにいるサラが一番大切だ。シンシアは、一人っきりの子だから…」
サラ「そうだよね…そういうゲイナー君なら、あたしが守ってあげる。シンシアに、もう一人じゃないって教えてあげたいね」
サラはゲイナーの背中に抱きつき、ゲイナ−のお腹に回した両腕に力を入れる。
それがゲイナーが前々回受けた傷を刺激したが、ゲイナーはサラの手の上に自分の手をそっと置く。
アイキャッチ
オーバーデビルの核に辿り着き、ゴレームから(ゴレームをオートモードに切り替えて)降りたアスハムは銃を構えて進む。そして、凍り付いたオーバーマンのコックピットらしきものと、それに手を伸ばしたまま同じく凍り付いた老人を見つける。
アスハム「これか。これがオーバーデビルのコックピットだな? 上手くいくときは、こうも容易くことが運ぶものか。しかし、この人間は…老人? いや、老婆のようだが…こんな女がオーバーマン乗りとはな。いまはそんなことはいい。オーバーデビルよ!」
そう叫んで、コックピットに駆け上がるアスハム。
しかし、凍っていてハッチが開けられない。銃底で氷を叩き割リ、中に入るアスハム。
コックピット全体が起動する。
アスハム「凄い、凄いパワーを感じるぞ、オーバーデビル! まさに悪魔のエナジーじゃないか!ひゃははははっ、手に入れたのだ私は! ついに究極の力を我が手に!」
が、オーバーデビルのコックピットは一瞬で水になって消えてしまう。
アスハム「あ…ああ…なんだこれは…なにか…なにかまだ足りないのか…」
■キッズ「足りないのは君のセンスだよ、アスハム君!」
キッズ・ムントが親衛隊のブラックドミを従えてやってくる。
キッズ「よくここまで来た、と言いたいが、来たところでそのザマとは…若いなあ。お前の狙いなど、私が気づいていないとでも思っていたのかあ〜?」
アスハムは立ち上がって、転がっている銃に目をやるが、
キッズ「おかしな考えはおこすなよ。親衛隊の雷撃に焼き尽くされたくなければな。さっ、お前の知ってる洗いざらいを話せ」
■と、オーバーデビルの光に運ばれたキングゲイナーが入ってくる。
キッズ・ムントは親衛隊のブラックドミをキングゲイナーに向かわせる。
アスハム「実にいいところに来てくれたなあ、ヤーパンのオーバーマン。ゴレーム!」
アスハムの声に反応したオートモードのゴレームがキッズの側にいたブラックドミにパンチ。
アスハム「シベリア鉄道ぉ〜、総裁ぃ〜!」
そう叫びながらアスハムは、オーバーデビルのパーツの柱を駆け上がり、
浮遊イスに座るキッズに飛びかかる。
■アスハムとキッズが揉み合う浮遊イスは、床に落ちる。
落ちた間もなく、アスハムは猛獣のごとくキッズに向かっていき、キッズの顔面にパンチ。キッズ・ムントは逃げることなく、アスハムの拳を顔面で押し返し、ひるんだアスハムにパンチ。そのままアスハムをのしていく。意外にも、キッズの方が上手。
アスハム「わたし、わたしがっ、オーバーデビルをっ、手に入れるのだっ」
銃を取り出したアスハムだが、キッズはあっさり銃口をアスハムに向け、引き金を引く。それをとっさに避けたアスハムだが間髪入れずに、
キッズ「×××サンド(聞き取り不可能。追記。ニコ動で確認したら「アスハムサンド」?らしい)にしてくれるわ〜!」
キッズのアッパーを喰らって倒れる。
キッズは倒れたアスハムを踏みつけ、
キッズ「身の程を知れ、若造。拳銃の使い所も分かってない男が。私に挑もうなど、思い上がりも甚だしいいいいいいいっ〜。虫ケラには興味が失せたわ。いまここでさっさと死ね」
■そこへさらにオーバーデビルの光に運ばれたシンシアとドミネーターが飛び出す。
シンシアを助けようとしたキングゲイナーは、ブラックドミの伸びた腕に捕まる。
シンシアがオーバーデビルの光の柱の上で目を覚ます。
アスハムが銃を手にして倒れたキッズ・ムントに向かっていく。
シンシア「な…おやめ! アスハム!」
光の柱から降り、滑る氷の床に足を取られながらアスハムのもとへと駆けて行くシンシア。
アスハム「…なに?」
シンシア「キッズ様に、何をする!」
アスハム「そんなふうに動いて大丈夫なのですか? シンシア殿」
シンシア「アスハム、お前、冗談でも許さないぞ!」
アスハム「ハハハハッ、生身で意気がるな突撃娘が!」
アスハム、シンシアを張り倒す。
ゲイナー「シンシア!」
サラ「女の子を殴る男なんて最低!」
しかし、 キングゲイナーはブラックドミに押さえられ、雷撃を受け動けない。
■シンシア「アスハム…お前は、私を騙してたんだ…」
アスハム「その通りだよ、突撃嬢ちゃん! すべてはオーバーデビルを手に入れるために、利用できるものは利用させてもらいました。ハハハハッ」
シンシア「お前になんか…キッズ様を傷つけさせはしない!」
シンシア、立ち上がり、両手を左右に伸ばして、まるでオーバーマンを操作しているかのような動作をする。
アスハム「ん? ハハハハッ、頭の中じゃ、オーバーマンを操っているつもりなのか?天才パイロットも、こんな風になっちゃ…なに!? バカな!」
シンシアのまわりにコックピットらしきものが現われる。
■キッズ「それでこそ私の育てたオーバーマン乗りよ!」
シンシアを乗せたコックピットのハッチが閉じようとするが、アスハムは強引に中に入ろうとする。
アスハム「シンシア! 入れろよ! 突撃娘えー!」
アスハム、シンシアに向かって手を伸ばす。
シンシアがそれを嫌がると、コックピットはアスハムを吐き出そうとする。
アスハム「ななな、なんだよ、ま、まてよ、オーバーデビル!」
キングゲイナーがシンシアのいるコックピットに向かって突進してくる。
ゲイナー・サラ「シンシア!」
それに反応したかのように、コックピットは光り、アスハムは吹き飛ばされる。
アスハム「バカな…何故私を選ばない…カリン、お前は…」
気がつくとアスハムの右腕は凍っている。
アスハム「あ?…ああああああああっ!」
■ゲイン「何がどうなっているのか、わかっているのか、ゲイナ−!」
ゲイン、ゲイナ−、それぞれ自分の機体に向かってくるブラックドミを倒す。
■オーバーデビルの光の柱は触手のように動き、口のようなものから、かつてブリュンヒルデが吐き出したのと同じ黒い光を、シンシアのいるコックピット目がけて放つ。それを受けたコックピットは爆発したように光に包まれる。
■その光は老婆の氷を溶かす。
老婆の目の前で、光はオーバーデビルの形になっていく。
ゲイン「なんだ? この御婦人は…」
老婆「また…バカなことを…誰?…誰がオーバーデビルを動かしたんだい?」
ゲイン「オーバーデビル!?…オーバーデビルか…なるほど、そういう名前なら、そりゃ、このとんでもない物体のエンジン…核かもしれんな…」
■ついに姿を現わすオーバーデビル。
顔は豚のようだが、全体は蜘蛛のようにも、コウモリのようにも見える。
サラ「なに? なにか聞こえる。シンシアの乗ったオーバーマンから」
鳴き声とともに、「歌」のようなものが聞こえる。
コックピットの中で、耳を塞いでいるシンシア。
■「アガトの結晶」の外でミイヤが涙を流している。
ミイヤ「ああ…あの歌…聞こえてはいけないあの歌が聞こえる…」
ルブル「ミ、ミイヤ、大丈夫だよ、あんなの歌になっていないじゃない」
ミイヤ「違うのルブル…あれは聞こえてはいけない歌なのよ…」
■アスハム「私…私が本当に求めるものは、何も手に入らないのか。カリンの心も…ゲインの力も…オーバーデビル、私を、もてあそんだのか?くううっ、いやあっ、いやあっ、(凍った右手を掲げて)聞けぇっ、聞くがいい、オーバーデビル! 片腕だけとは言わぬ! 我が目的のために、欲しい! お前が欲しいのだあああっ! 私の、絶望に満ちた魂をお前に捧げる!だから…アスハムという、この哀れな男の声を聞いてくれぇぇぇ!」
オーバーデビルの目の光がアスハムに集中し(まるで舞台のライトが舞台上に人物に集中するかのように)、鳴き声が響く。それを聞いて笑みを浮かべるアスハムだが、はたして。
■「アガトの結晶」の外。
「この歌はなんだ」
「あそこだ。あの光ってるところから」
「頭の中に響いてくるぞ」
アデット「何が起こってるんだい?」
ガウリ「どうも、取り返しのつかない事態になっているようだな」
アデット「ゲイナーとか、ゲインって、何やってるんだ…」

いわゆる、「∀ガンダム」のギム・ギンガナムに続く、子安劇場第二弾の回である(笑)。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm651755