第23話『復活のオーバーデビル』(2003/03/01放送)

脚本/高山治郎
コンテ・演出/山本裕介
作監重田敦司
原画に松本憲生

■ゲイナー・サンガの前回のあらすじ。
なし。
■オーバーデビルに取り込まれてしまったシンシア。
あくまでシンシアを助けようとするキッズ・ムントと、ここは下がりましょう、とキッズを押さえるアスハム。
■オーバーデビルのコックピットで、「歌のようなもの」に苦しむシンシア。
ゲイナー「この音響、『歌』のように聞こえるけど…」
サラ「なんか、世界中を凍らせるようじゃない? これ」
シンシア「…あたしにも歌えっていってるみたいだ」
■オーバーデビルのコックピットの前で凍結していた老婆を救出したゲイン。
ゲイン「婆さん、大丈夫か。御婦人をお助け出来なかったとあっては、『黒いサザンクロス』の名折れゆえに!」
■キッズの動きを押え、オーバーデビルの前に出たアスハム。
アスハム「そっちがそのつもりなら聞くがいい! 世界をオーバーフリーズさせようというのなら、ドミネーター!」
アスハムのもとに降りてくるシンシアのドミネーター。
アスハムはいつのまにドミネーターを操れるようになりましたか。
ドミネーターに乗り込むアスハム。
アスハム「オーバーデビルよ、我に従え! 悪いようにはせん!」
■シンシアの意志を無視して外に出ようとするオーバーデビル。
アスハム「そうだオーバーデビル、外の世界で、思う存分に歌わせてやるぞ!」
キッズ・ムントは親衛隊のブラックドミを使い、オーバーデビルを止めようとする。
ゲイン「化け物め! 『アガトの結晶』自体を崩壊させて、外へ出ようってのか」
キングゲイナーはオーバーデビルを追う。
■「アガトの結晶」の高度が下がり、オーバーデビルが壁を突き破って出てくる。
ケジナン「だーっ、本社が潰れたら、俺たちの給料どうなるの!」
シベ鉄の本社、「アガトの結晶」へドーベッグで向かっていくケジナン。
ジャボリ「どーするのケジナン!」
ケジナン「受けとめてやる! 俺のオーバースキルで! 受けとめてやるー!」
■しかし、どう見ても無理。
落ちてくる「アガトの結晶」からドーベッグで逃げる、ケジナン、エンゲ、ジャボリの3人。
■ゲインのエンペランザも外に出る。
ゲイン「(オーバーデビルを見て)あの音響はあいつか!」
ゲインが救出した老婆はエンペランザの左手にいる。
老婆「久しく聞いてはいなかった、オーバーデビルの氷の歌を聞くとは…」
■オーバーデビルに向かっていくキングゲイナー
ゲイン「ゲイナー! 音に騙されるな! そいつの誘いだぞ! (老婆に)御老体、この音響、歌の意味は知っているんだろう?」
手で耳を塞ぐ老婆。
ゲイン「ババアめ…」
ゲイン、エンペランザのライフルをオーバーデビルに向けて撃つ。
■サラ「あいつの大きさがわからない!」
ゲイナー「光の反射率を変えて、距離感をメチャメチャにしてるんだ! 電波も同じだ!」
チェンガンがオーバーデビルに凍らされてしまう。
エンペランザのライフルの弾もオーバーデビルの目前で凍り、止まってしまう。
■アスハムのドミネーターと、キッズのブラックドミ部隊も外に出る。
ブラックドミはオーバーデビルに向かう。
アスハム「キッズ・ムント、敗れたり! 自ら墓穴を掘りに行くとは!」
■氷づけになっていくオーバーデビルのコックピット。
シンシアは「歌」の歌詞のようなものを呟いている。
シンシア「違うよ! 私は…大昔にいた氷の女王になんか、なれるわけがない…」
■オーバーデビルの動きを止めようと、オーバースキルを使うブラックドミ部隊。しかし、オーバーデビルは鳴き声を上げ、コックピット部から黒い光を空に向かって放射する。
キッズ「こいつ、氷の門、アイシングゲートを開こうというのか!」
一瞬にして空が暗くなり、オーロラのようなものが現われる。
■ゲイナー「夜になった…」
サラ「あのオーバーマン、何をやったの?」
キッズ「そうか、こいつがアイシングゲートを呼ぶ暗黒の白夜ならば…シンシア、だめだ!」
ブラックドミ部隊がオーバーデビルに次々に捕まり、逃げるキッズもブラックドミから振り落とされる。
アスハム「やはり! 私が手に入れたデータは正しかったぞ。ここまでの展開…予定通りである! これが暗黒の白夜をもたらす、オーバーデビルの仕種ならば!」
予定通りって…前回の叫びも予定通りなのか?
いつのまにかドミネーターの右腕もアスハムと同じく凍っていて、しかも「鍵」のような形に変わる。
■ブラックドミから落ちたキッズはエンペランザのライフルの銃身に引っ掛かる。
ゲイン「婆さんの次には爺さんかい? 今日はよくよく老人に縁があるな」
キッズ「な、なんとかしてくれ〜、褒美はかなりのものを考えてやる〜」
ゲイン「(老婆を指して)残念ながら、こちらも手が塞がっていまして、ご自分でなんとかしていただかんと」
キッズ「マルチナ・レーンが、なんでこんなところにいるんだ」
ゲイン「ん? マルチナ…レーンだと?」
■オーバーデビルに捕まったブラックドミは中のパイロットごと凍らされ、潰されていく。
サラ「…ああっ!」
ゲイナー「シンシアがやっているんじゃない!」
サラ「そ、そうよね…でも」
アスハム「きさま! さがれ!」
アスハムのドミネーターに吹っ飛ばされるキングゲイナー
■アスハム「無駄なことはやめておけ。オーバーデビルは、何人たりとも近づけぬ、高貴な存在なのだ。お前たちとゲインのおかげで、私はあれを手に入れることが出来た。礼は言わせてもらう。いでよ! 氷の門、アイシングゲートォォォ!」
■アスハムのドミネーターがその凍った右腕の「鍵」を空にかざすと、オーバーデビルの後ろに氷の結晶のような形のものが現われる。
ゲイン「氷の結晶が、空中で開いている!?」
キッズ「氷の門…あ、あの時と同じだ」
マルチナ「ここまでやらせてしまって、まったく」
アスハム「アイシングゲートよ! 我が眼前に、氷の城への道を開け!」
■ドミネーターの右腕の氷の「鍵」を「氷の結晶」に突き刺すと、ドミネーターはその中へと消えて行く。
キングゲイナーはそれを追いかけるが、フォトンマットリングがオーバーフリーズして、地上へ落下してしまう。
ゲイナ−「シンシアあー!」
シンシア「あたしは、氷の女王にはなんないよ、オーバーデビル、あ、あたしは違う!」
■オーバーデビルからアスハムの声が響く。
アスハム「ハハハハッ、オーバーデビルは、これより、まず東へ向かう。目障りなヤーパンどもの聖地を、氷に変えてごらんにいれよう!」
ゲイナー「ヤーパンを…凍らせるって!?」
アイキャッチ
■「ヤーパンの天井」ユニットの側に、キッズ・ムント専用列車、チェルノボーグが停車している。
■バッハクロンのカーゴでは、あくまでヤーパンを目指すべきだというガウリと、クラスメートや知り合いを危ない目にあわせられないというベローが対立している。
そのどちらも否定できないアデット。
コナ「それだけみんな、迷ってるってことよね」
■キッズ・ムントとマルチナ・レーンは、ゲイン、ゲイナ−、サラの取り調べを受けている。
ゲイン「…そろそろ口を開いてもらえませんかね。俺は取り調べというやつは本当に苦手でねえ。二人だけで御婦人を取り調べるというのなら、そりゃマメにやるけど?」
ゲイナー「この人の聞きづらい、ジョーク以前のジョークなんか、聞きたくないでしょう?あのオーバーデビルというのは、どういう代物なんですか?」
キッズ「どうにも小さいじゃないか。こんな着替えしかなかったのかね!」
キッズは「アイラブヤーパン」と書かれたトレーナーを着させられている。
ゲイン「濡れた服は年寄りには気の毒だと思ったんだがなあ。下の方は凍っていたでしょう?」
サラ「ぷっ(←笑ってる?)」
キッズ「話すことなど何もない!」
ゲイナー「シンシアは、あなたにとっては大切な存在じゃないんですか?オーバーデビルっていうのが、シンシアを取り込んでいったのなら、僕は彼女を助けたいんです」
ゲイン、マルチナに寄って、
ゲイン「なあ婆さん。あんた…マルチナ・レーンっていうんだろ?」
ゲイナ−「え?」
サラ「レーンって、それなら…」
ゲイン「ああ。シンシア・レーンの親族なんだろ?」
ゲイナ−「だったら、どうして、シンシアを助けたくはないんですか?」
■と、アナ姫が食事の差し入れに入ってくる。
ゲイン「姫さん、ここはあなたの来るところでは…」
アナ姫「いいえ。お客様をもてなしするのは私の任務です」
アナ姫に付いてきたリンクスがキッズの頭にたかっている。
アナ姫「さあ、キッズ様、リュボフの作った特製スープです」
キッズは最初は受け取らないが、リンナが匂いを嗅ぐと、あわててスープに手を出す。
アナ姫「おばあさまも。どうぞ。聞けば、氷の中に閉じ込められておいでだったとか」
アナ姫、マルチナにもスープを差し出す。
アナ姫「どうぞ。おばあさま」
マルチナ、ゆっくりスープに手を伸ばし、アナ姫から受け取る。
アナ姫「おかわりも用意してありますから、召し上がってください」
マルチナ「はあ…これが暖かさというものだったんだねえ…」
今回ここが一番作画が良く、いいシーンではないかと思う。
■オーバーデビルの内部?のアスハムのドミネーター。
アスハム「ハハハッ、氷の城壁の中は快晴無風。快適なり〜。さあ〜、高らかに歌え〜、オーバーデビルよ〜。…しかし…さっきは、オーバーデビルをコントロールしているようなことを言っておいたが…実際のところ、こいつはどこへ向かっているのだ?まあ、よいわ、東へ向かえばヤーパン、西に向かえばロンドン・イマだと言えばいい。南のときは、中原を凍りつかせるてやる。ハハハハッ」
アスハム…結局お前何も考えてなかったのか…
■バッハクロン。
サラ「ねえ、ゲイナ−はどう思ってるの?」
ゲイナー「シンシアを助けるだけさ」
サラ「そうよね」
ゲイナー「それに…」
サラ「ん? それに?」
ゲイナー「自分たちの必要なものは、自分たちの力で手に入れなきゃならないんだろう?
だから、ヤーパンの土地に行くためにも、僕はオーバーデビルと戦って勝つんだ」
サラ、ゲイナーに抱きついて、
サラ「うん! 『エクソダス』を成功させれば、みんな幸せになれるよ!」
ゲイナー「う、うん…」
サラ「なら、さ、やろ!」
ゲイナ−「え、スープがまだ…」
サラ「あははは…」
そのままカーゴから出て行く二人。
■その様子を見ていたゲインとママドゥ。
ゲイン「ついに奴も本気になってくれたか」
ママドゥ「どうなさるおつもりです? シャルレ様」
ゲイン「奴がああいう結論を出したんだ。となれば、ピープルの意志をまとめるのが、俺の仕事だろ?」
ママドゥ「はい…」
ゲイン「こりゃもう、ヤーパンのためのものじゃなくてさ、俺の『エクソダス』でもある」
ママドゥ「はい。ご両親がご覧になったら、さぞやお喜びでしょう」
■ユニットの街中、率先して「ミイヤの祭」の歌で踊ってみせて、ピープルたちの気分を盛り上げるゲイン。ミイヤの踊りの立体映像も流れている。
■キングゲイナ−を整備中のゲイナ−のもとに、アナ姫がマルチナを案内する。
マルチナ「これがお前さんのオーバーマンかい?」
ゲイナー「はい。先ほどは作戦のアイデアをいただけて、ありがとうございます」
マルチナ「ふん。実行できなけりゃせっかくのオーバーセンスも泣くけどね」
ゲイナー「オーバーセンス?」
マルチナ「オーバーマンを乗りこなして、オーバーフリーズを発動させることさ」
ゲイナー「ああ…」
アナ姫「そうですわ、おばあさま。ゲイナーほどのオーバーマン乗りはおりません」
マルチナ「だけどそれだけじゃあ、シンシアを助けられないよ」
ゲイナー「え?」
アナ姫「おばあさま?」
マルチナ「能力の100%を超えてこそ、本当のオーバーセンスだよ」
ゲイナ−「100%を、超える…」
マルチナ「それがオーバーマンだろ?」
ゲイナー「超えられなければ、オーバーマンではない?」
マルチナ「ああ…あの孫を…あの母親のようにはさせないでおくれ…」
■チェルノボーグにユニットのエネルギーを注入する作業を、ケジナンたちも手伝わされている。
「アガトの結晶」なき後はキッズ・ムントはすでに総裁ではなく、シベ鉄の残党をまとめ上げれば自分こそ新総裁だと騒ぐケジナン。そしてケジナンたちのドーベッグのまわりに発砲して尻を叩くアデット。
アデット「さっさと働くんだよ! いままでお前らは、ヤーパンたちに何をしてきたかわかってんだろ?
ここでちゃんとしなかったら、ただじゃおかないから!」
ケジナン「ただじゃおかないからったって!」
アデット「知らないのかい? ヤーパンにはね、簀巻き打ち首腹切りっていう、伝統的な処刑法があるんだよ」
ケジナン「簀巻きってヤーパンの寿司?」
エンゲ「す、寿司にされんですか〜?」
アデット「それがやなりゃ、とっととチェルノボーグに、『ヤーパンの天井』のエネルギーケーブルを、繋ぐんだ!」
■コナ「『ヤーパンの天井』のエネルギーをみんなまわすの!」
ナン「みんなって、全部かい?」
コナ「そう、ヒーターから照明まで、全部ね」
ユニットの街の灯りが消えてゆく。
■バッハクロンの一室。キッズとマルチナ。
キッズ「何もわしのいる部屋までヒーターを止めることはあるまい」
マルチナ「随分と協力したのね」
キッズ「シンシアを助け出すためだ」
マルチナ「ほう」
キッズ「そもそもオーバーデビルを目覚めさせるつもりなどなかった。私はシンシアに、お前という存在を伝えたかっただけだ」
マルチナ「そりゃまた異なことを」
キッズ「肉親的なものに憧れていたシンシアに、マルチナ・レーンという祖母がいることを教えてやりたかったのだ」
マルチナ「ふん。戦闘力を高めるためにだろ?」
キッズ「オーバーデビルによって母は殺され、祖母は氷づけになってる事実は事実として…」
マルチナ「オーバーデビルを…フフフ…」
マルチナの不敵な目つき。
マルチナ「オーバーデビルを掌中のものにしたいんだろ? そんなの簡単なことだよ。あたしと同じになりゃいいのさ」
毛布を剥ぐマルチナ。
キッズ「…そりゃ、オーバーフリーズは…」
マルチナの下半身は氷づけになっている。
マルチナ「そうだキッズ、あんただって、これはご存知だろ?」
■ゲイナーの自室。ゲイナーとサラ。
ゲイナーは発電機を使ってゲームの電源を入れる。
サラ「どうするつもり?」
ゲイナー「さっきのマルチナさんの話を試すのさ。今の自分を超えろってことをさ」
サラ「それで…ゲームなの?」
ゲイナー「シンシアに負けた僕は『キング』じゃない。いままでの僕を超えるためにも、
もう一度『キング』の称号を取り戻してみせる」
サラ「『キング』の…称号?」
ゲイナー「もう一度、僕は『キング』ゲイナーになる。いや、『キングゲイナー』を超えるんだ」
そう言って、ヘッドマウント・ディスプレイを装着するゲイナー。