「ガールズ&パンツァー」の特殊性

至好回路雑記帳: メカ+美少女+日常=ガルパン・武装神姫 / これが現在のアニメの最先端。
↑の記事をヒントに今更ですがちょっと思うところをいくつか。

今更なのは、そろそろ終盤?の「ガルパン」の展開でその作品スタイルがある程度見えてきたので、書くんですが。
当初、「戦車道」と言いながら、戦車の描写はそこそこで日常まったりな、「けいおん!」以降の作品群に倣ったものなんだろうなあ、と思っていました。しかし、回を重ねるごとに、ガチで燃える(「萌え」じゃなくてどちらかというとやっぱり「燃え」)戦車戦(試合)の描写に驚きました。

なによりミリオタではないのでどこまでリアルなのか分かりませんが、素人なりにリアルに見えそうなCGの戦車、それを補強するSEのこだわり、音響面、段取りで見せる戦闘(試合)、等々で、素人でも楽しめる親切設計。一応、学校の部活であるものの、「けいおん!」的な「日常」シーンはほとんどなく(むしろ観ていないので申し訳ないが「武装神姫」の方が、聞いたところによると、余程「日常もの」に近いらしい)、いわゆる戦闘美少女ものの系譜から言ってもちょっと変化球なんだろうなあ、と思います。

キャラに比べて力の入りすぎた戦車描写、戦車自体がある種「芝居」してる感じ。その戦車の「芝居」はそれだけ見れば実に面白いんですが、一方で前にも指摘した、戦車内のキャラがケガをするのか死ぬのかのリアリティの基準、見たところ、砲撃を受けて、火を噴いていたり、車体がゴロンゴロン転がってるのに、中のキャラはススまみれになっただけで無事だという、まあ、そういう基準を示してくれているので納得は出来たんですが、戦車描写がリアルすぎて(そこまでしないと受けが良くないのか)、戦車のリアル度合いとキャラのリアル度合いのミスマッチに戸惑います。そのあたり、「けいおん!」の楽器はリアルだけど、練習シーンは描かれないのと同じなのかもしれません。

たとえば「咲-Saki-」の麻雀描写は対戦中の駆け引きの過剰な心理描写のイメージ化だし、「ストパン」はミリタリーネタが仕込まれていても、架空の敵のネウロイの侵略、パンツじゃ(略)、魔法力等々、多少ネタよりの世界観を示してくれたのに対し、「ガルパン」は世界観が分からないんですよね。あの甲板に街があるでかい空母とか、ロシアだったり、アメリカだったり、イギリスだったりそれぞれ担当の学園があるにも関わらず実は全員日本人だったり、基本的な根底の世界観を嘘でもいいから最初に提示してくれよ、という気になります。「戦車道」だけでは無理。「けいおん!」や「咲-Saki-」、「ストパン」はいわばファンタジーだと思うけれど、「ガルパン」は「試合」といいつつ「戦争」、と突っ込まれても仕方がない。

永野護の「ゴティックメード」が人をえらぶビジュアルの割には、巨大ロボット(兵器)は美しいんだけれども、されど、殺戮機械である、という普遍的な考え方をちゃんと提示していて感心しただけに、余計そう思います。


そこで、あえて「ガルパン」を肯定するならば、監督が水島努さんだけに、これは、あの人の毒のある作品歴、「撲殺天使ドクロちゃん」だったり、「大魔法峠」だったり、「ムダヅモ」だったり「じょしらく」だったり、メカと美少女に、水島流の、毒を含んだ「日常系」をプラスさせたもの、と考えるとなんとなく分かる気がします。

つまり、「ガルパン」は一見口当たりがいいように見えて(最後までさわやかに終わるんだと思いますが)、実は結構毒を含んだ燃えアニメなのかもしれない。

某ラジオで、これは本人の直接の発言ではないのですが、水島作品のいくつかに参加した某プロデューサーの話によると、今のうちに(40代のうちに?)出来るだけいろんなジャンルの作品を手がけておきたい、と言っていたそうで、一時期仕事受けすぎなんじゃないか、とも感じていたんですが、もしかしたらそのことから得た経験値で、「ガルパン」は水島努監督にとっての、エポックメイキングな作品になってるんじゃないんですかね。

追記。
ガールズ&パンツァー 11話以降の放送が来年3月に延期見込み
http://sasugano.blog.so-net.ne.jp/2012-12-16
ありゃりゃ。


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調子に乗って貼ってみましたが、すでに予約してる人も多いだろうし、別に気にしないでください。
ただ、9話まで観て、個人的にも久々にBDパッケージで所有したくなる気になりました。


追記その2(2012/12/27)。
10.5話。延期のための二本目の総集編とはいえ、安全面その他設定の補足説明をしていて、良かった。
まあ、「戦車道」の説明は公式サイトに書かれていて、つい最近ようやく確認したところなんだが、本編中でやることが大事なので。贅沢を言えば、安全面の所は「説明」ではなく「描写」でやって欲しかった。