25話「オルファンのためらい」

オルファンは少なくとも人類の敵ではない。オルファンをめぐっていがみ合っているのは人間たちの方である。ゲイブリッジの理屈も、バロンの純粋で極端な野望も、今更、オルファンは情愛的なものを欲しがっているのでは、と冗談交じりに言う伊佐未夫妻も愚問愚行でお話にならない。
今回のキモは比瑪とクインシィのこのやりとりにある。

「オルファンは、あたしが絶対に護る!」

「考えすぎです、依衣子さん! オルファンさんは、一人でやっていける方です。護ることなんか、考えなくったっていいんです。でも、放っておいては可哀想なんです!」

この比瑪の言葉にクインシィは叫ぶ。
「乙女チックなことを!」

このやりとりほど、この作品のあり様を一番象徴したものはない。

確かに、オルファンが欲しているのは「情愛」だからだ。
だからこそ、というかクインシィにとっては皮肉にも、オルファンは比瑪の言葉に答える。

「オルファン! あんたには私がいるじゃないか! 他の誰もいらない。あたしがずっといてあげるから!」
そう叫びながら焦ったクインシィはバロンズゥごとオルファンの女性フィギュアに飛び込む。かつては「家族を守る」、今は「オルファンを護る」。依衣子はいわば「いい子」すぎたので、「誰かを守る自分」が否定されてしまえば壊れてしまう。↑の叫びは裏を返せば「自分のそばにずっといてほしい」という甘えとも取れる。
そして、クインシィはフィギュアと同化する。クインシィとオルファンはいわば精神的には同類だ。依衣子はあとで気付くかもしれないが、これは同類が同類のエネルギーを食っただけである。