11話「姉と弟」

アノーアがいったん退場し、ノヴィス・ノアの新たな艦長に、船の「カウンセラー」的存在のアイリーンが就くのは実に「ブレン」らしい当然な流れ。そして新キャラ、カントの登場は、オルファンやブレン、グランチャーの存在が結局推論でしか捉えられないことを示す。特に、悲観的な大人たちに対して(押さえつけるか、コントロールしようとする大人たちに対して)、楽観論を主張するカントの発言は結構重要なポイント。オルファンが、「イデオン」の「イデ」のごとき超越的存在のように見えて、実はいち「生物」であるということ、ブレンに対しての接し方と同じく、「理屈」ではなく「情」でコミュニケート出来るかもしれないという今後の展開を示している(オルファンとイデの決定的な違いについては、のちに語ることになると思う)。
後半はサブタイ通り、勇と依衣子の、勇がオルファンを離れてからの初めての再会。依衣子は実の親をはっきりと自分から捨て(それは逆に「オルファンの抗体になること」=「親代わりとしてのオルファンへの依存」ではあるのだが)ながらも、弟に対する思いは残っている。勇も姉に対する思いはある。ただ、お互いのオルファンに対する考え方(理屈)が違う。そのことによって分かれる立場の違い。そのためにこの姉と弟はすれ違う。
今回、幼少の頃、勇が依衣子に花をあげたこと、それを当の勇があっさり覚えてない、とスルーするシーンが有名だが、あれは、依衣子が(先に言い出したことで)譲歩したようには見えない。お互いの「情」と「理屈」がかみ合わないのである。そう考えれば、ノヴィス・ノアに来た自分の父親を殺せない、どうすればいいのかわからない、という勇の苛立ちの描写からも分かるように、まだ勇に、姉に対して「理屈」ではなく「情」で接する余裕がないのかもしれない、とも取れる。