第39話『サンタビトになりたい』

■メテオさんの片思い


コメットさんは、イマシュンとメテオさんのライ
ブに招待されます。


「あはっ、そうか、サンタビトはもともと地球の
サンタクロースだもんね。コメットさんのお母さ
まが地球に来たときに、サンタさんのこと知った
んだって。それからサンタさんのこと、星国に帰
って、みんなに知らせたの。一年に一度、みんな
にプレゼントしてくれる人が、地球にはいるんだ
よって」
「そしたら、大きなホシビトさんたちが、まだ小
さいホシビトさんたちに嬉しいことをプレゼント
するようになったんだぼ」
「そのときに、するかっこうが、サンタビトさん、
っていうの」
「あ、そっか、瞬さんもサンタビトになってみた
かっただけなのかな?」
「それは違うぼ」


「やっぱりやめといたほうがいいぼ〜」
「そうかなあ。だってお友達だよ」
「メテオ様はイマシュンが作った歌、姫様のため
だって知らないんだぼ」
「うん、そう言ってたけど…そんなに深い
意味はないと思う」
「って、それは姫様がそう思い込みた
いだけだぼ」


イマシュンとメテオさんの船上ライブが始まる。


「ほら、やっぱり瞬さんって、みんなに歌をプレ
ゼントするサンタビトさんなんだ」
「う〜ん…」
「わたしのためなんてことないよ。みんなのため」
「で〜も〜」
「これって、素敵なことだよね」
「う〜ん…」
「あれ…なんでコメットがここに? え? まさ
か、呼んだのは瞬さま? やだったらやだわ。わ
たくしたちが仲睦まじいところをコメットに見せ
つけたかったのね〜」
「わたしたちもサンタビトやろ」
「そうだぼ。ボーもサンタビトさんになってラバ
ピョンのとこ…」


ムークが困っている。


「どうしたんだぼ?」
「困ったものだ〜」
「メテオ様がイマシュンに夢中になっちゃったか
らかぼ?」
「まさにそのとおり、どういう風の吹き回しか、
あの少年が、姫様のために歌など作るゆえ…」
「それは勘違いだぼ。あれはイマシュンがボーの
姫様のために作った歌だぼ」
「おおっ、コメット様に?」
「だからムークさんが落ち込むことないんだぼ」
「そ〜、それは、それは〜、本当か、事実か、ボ
ー」
「ほ、本当だぼ。ボーからプレゼントだぼ。ムー
クさんの喜ぶ顔が見れて嬉しいぼ」
「うん、安心した、ありがとう、ボー」
「でもメテオ様には内緒だぼ」
「それはもちろん、もちろんです…あいや、しか
し!」


ムークはその使命ゆえに、そのことをメテオさん
に伝えざるをえない。


「そんなこと、わかってたわよ。あの歌を聞けば、
誰だってわかるったらわかるの。おバカさん
ねムークは。これは瞬さまとコメットとをくっつ
けるわたくしの作戦だったのに…それに気づか
ないなんて…だから、だから、わ
かってないのはコメットだけじゃ
ないの!!」


うつむき、後ろを向いて言うこのメテオさんのセ
リフは、実は自分に向かっているセリフ
です。イマシュンがコメットさんのほうを向い
ているのはあの歌の歌詞から容易に想像できた。
なぜそれに自分(メテオさん)は気づかなかった
のか。コメットがはっきりしないから、こんなこ
とになってしまうんだ。

そのコメットさんは純粋にというか、脳天気にサ
ンタビトをやろうとしている。「大人」であるメ
テオさんはイマシュンをコメットさんに譲ろうと
します。

いままで、メテオさんは、コメットさんの「子供」
の部分に斜に構えてつっこみを入れたり、コメッ
トさんの「親代わり」となって、コメットさんが
解決出来ない事態を(なりゆきとは言え)解決し
てきました。しかし、それらはあまりメテオさん
には直接関係のないことが多かったわけですが、
今回は違います。メテオさんは当事者の一人
なのです。だから、以前のように平然としていら
れるわけがありません。


「はやく瞬さまのところへ行くのよ」
「行くって…」
「ライブのあと、二人でお食事をする予定だった
の。それをぜ〜んぶあなたに譲るわ」
「譲ると言われても…わたし、これからツヨシく
んたちの…」
「はやくったら、はやく! これ以上わたくしに
恥をかかせるなら覚悟というものがあるのよ」
「覚悟って?」
「泣くわ! 泣くったら泣くわ!」
「…えっ!?」
「わたくしが泣いたら、どうなるのかわかってる
の?」
「どうなるんだぼ?」
「そんなの泣いてみなければわからないわよ〜」
「コメット様…お願いします…」


コメットさんは「誰かひとりのため」より、
「みんなのため」を優先します。だから、
どうしようもできません。ほんとにできないので
す。そして、以前なら、無関係なメテオ
さんがこの状況を解決したのです。し
かし、今回メテオさんは事の当事者で
す。解決してくれる人がいません。だ
から、泣いてつっこむしかないのです。


「…ごめん…わたし、そんなこと
できない…」
「あああ〜、逃げたああ〜」


どうすることもできず、逃げてしまったコメット
さんですが、メテオさんを傷つけてしまったこと
で悩みます。そのコメットさんを父親である星国
の王様が助けに来ます。


「みんなのことを嬉しい気持ちにしてあげるのが
サンタさんの役目ですよね。でも、わたし、逆に
傷つけちゃって…どうしたらわたし、ちゃんとし
たサンタさんになれるのかなあ」
「それはまず自分が楽しい気持ちになることじゃ
な。楽しい気持ちじゃない人からプレゼントをも
らっても、誰も嬉しくはならないからな」
「でも…楽しい気持ちには…今、なれないんです」
「では、自分にあげるプレゼントを考えてごらん」


王様といっしょにサンタ活動をする過程で、結局、
コメットさんは、


「はい、やっぱりみんなが喜ぶ顔、それ想像する
だけでも楽しい」
「人は誰でも自分に自信がなくなってしまうこと
がある。とくに他人を傷つけたりしたら胸が痛む。
だがコメット、お前が楽しい気持ちを失ってしま
ったら、他人を喜ばせることは出来なくなってし
まうのだよ。サンタの仕事はね、想像することし
かできないけど、喜んでくれることを願うこと、
そして喜んでくれることを信じること」


変わりません。そして、
王様のサンタ論はそのままコメットさんの本質で
す。コメットさんが「輝き」に他人と
いっしょになって感動し、楽しい気持
ちを共有する。そのことで、他人に「輝き」
を与える。ツヨシくんネネちゃんとの関係はまさ
にそれですし、そしてイマシュンはこう言います。


「これはあくまでイメージなんだけどさ、俺にと
ってコメットさんは、天使みたいな娘なんだ」
「…天使?」
「苦しいとき、つらいとき、偶然かもしれないけ
ど、いつも助けてくれた。だからあの娘ががんば
っていると思うと、俺もがんばれる。感謝の気持
ちでいっぱいなんだ」
「感謝…」
「だからあの歌も作った。俺が歌うより、君が歌
ってくれれば、コメットさんもちゃんと聞いてく
れるんじゃないかと思って、君に歌ってもらった」
「つまり、コメットはあなたの…」
「憧れの存在…」
「でも、現実にそばにいるのは、
わたくしですわ」
「えっ…」
「…いえ、なんでも」
「いや、そうだね。今度は君の歌
を作らなきゃ」
(略)
「コメット〜」
「あの、わたし、もう一度ごめんなさいを…」
「ありがとう、サンタビトさん!」
「コメットに言ってるんじゃないわ、サンタビト
さんに言ってんのよ。あのあと、二人っきりのと
っても素敵なひとときを過ごしたの。お礼を言う
わったら…お礼を言うわ」


これは、いつものメテオさんがコメットさんの行
動をいぶかしんでちょっかいを出し、それが巡り
巡って事態を解決してしまうことになり、メテオ
さん自身にとってもいい結果をもたらすパターン
の変型と言っていいでしょう。たとえば秋の収穫
祭の時と同じです。

そして問題が残るのはイマシュンの最後のセリフ
です。このセリフ、今回で止めて見れば、メテオ
さんは良かった良かった、ということになるので
すが、その後の41話を観てしまうと、その回でス
タジオに来たケースケに化けたプラネット王子と
コメットさんをやたら気にするイマシュン、とい
う描写があるために、逆に今回のメテオさんに対
する言葉はその場限りのものだったのか、という
ことになってしまい、メテオさんはひとりで盛り
上がってただけ、という、まるで正反対の印象に
なってしまうのです。(2002/11/03記)