モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE -亜空の深淵-

一見B級的なタイトルとは裏腹に、実はSFとしては堅実な作りであったTV版のテイストとほぼ変わってない。
それゆえ、TV版の時と同じくあまり万人むけではないのは仕方がないが、きちんとした「SFアニメ」は昨今貴重なのでこのような作品はあってもいいだろうし、それが劇場版まで作られたことは喜ばしいことではある。

今回の劇場版では賛否あろうが、ゲストの少年、無限彼方が主人公と言ってよく、加藤茉莉香以下TV版のキャラがそれなりに活躍するものの、基本的には「脇役」の位置に退いている。それはTV版のキャラクターはTV版で充分描かれたからかもしれない。また、TV版が好きな人には違和感を抱かせるような、あきまん氏のキャラ原案をより活かしたちょっと大人びたキャラデザは、無限彼方の目線からすれば、納得出来ないこともない。特に弁天丸船長の、すでに海賊業において貫禄のついた加藤茉莉香お姉さん(あおりで見せるカットが多かったし)と無限彼方少年との関係は、両者に共通した父親との関係の問題があるにせよ、自分の世代的には劇場版「銀河鉄道999」のキャプテンハーロックと少年、星野鉄郎との関係と勝手にダブらせて観ていたので、結構感慨深い。余談だが1979年の中学生の時にリアルタイムで観た劇場版「銀河鉄道999」、「ガンダム」双方のうち、「ガンダム」はよく分からずも背伸びして観ていたのに対し、「999」は素直に強く思い入れ出来ていた記憶があるのでなおさらである。

劇場版ゲストの無限彼方少年のドラマについては、親から与えられたモビル「スーツ」的な亜空間ダイブ用の人型「潜航艇」(でいいんだっけ?)に乗って、結局はお約束だが父の意志を継ぐという、実に伝統的なロボットものパターンだったりして、思わず吹いてしまったが、目新しい要素はなくともSFとして手堅く密度の濃い作りはTV版となんら変わりはなかった。


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