言の葉の庭

劇場で観る方が安いのだが(観るつもりだが)、iTunesのダウンロードで購入視聴(「ほしのこえ」の頃からパッケージ販売にこだわってきた氏にしてはダウンロード販売も当然なのだろう)。

ほしのこえ」の時に、この人は年取ったらどんな作品を作るのか、気になってたんだが、ほら、「ほしのこえ」の時にはセカイ系と騒がれていたから。
その後、「雲のむこう、約束の場所」で周囲の期待も大きすぎたのか、いきなり大作指向だったが、まだドラマが未熟すぎた。早すぎだと思った。「秒速5センチメートル」は身の丈にあっていそうな気がしたんだが、「ほしのこえ」から続く、片思いの男が女に執着する部分はほぼ共通していて、次の「星を追う子ども」では詳しい事情は知らないが、どうみてもジブリ風大作路線で、少年少女がメインであるはずなのに、そこでも中年男の失った女への執着が目立っていた。

というわけで、なかば新海誠には興味が薄れてたんだが、今回ははっきりいうと、今までの経験値が上手く実を結び、良かった。過去作品の欠点をクリアしている。
大まかには「ほしのこえ」のプロットに似ているが、あれから成熟して、登場人物を増やし地に足付いた関係性を描き、男女の関係も、今までとは違って男女逆転させたところもあり、しっかり葛藤→衝突展開もあり、二人のキャラクターがちゃんとぶつかっている。

映像も、特に自然描写がかつて単純に過剰すぎて目立ち過ぎだったのだが、もちろん今回も自然描写が第二の主役かと思うほど力が入っているが、単に過剰すぎず、抑制が効いていて渋さがある。それもひとつの成熟の結果だろう。

総じて、「ほしのこえ」以降、集団作業で作ってきて、いろいろあったんだろうが、集団作業で培ったものが今作では上手く実を結んだような気がする。何より劇中で出てくる小説が今まではミーハーに村上春樹だったのが、夏目漱石だったりするあたり、その部分だけで成長が見えるとも言える。

とにかく、個人的には冒頭の引っかかり(「ほしのこえ」の時に、この人は年取ったらどんな作品を作るのか)にようやく答えてくれて満足。


第1回 新海誠監督の成熟した作品。『言の葉の庭』 | WEBアニメスタイル


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