アニメ定点観測2012秋

新劇ヱヴァQの公開まで待つつもりでしたが、このへんで書いときます。秋新番だけでなく、10月は映画の公開も多かったし、プライベートでは仕事も忙しかったので視聴が大変でした。今はようやく一息つけたところなのでこうしてブログの更新も出来ている訳です。

個人的に観測の一つの切り口として、「リアル度合い」、つまり、リアリティの基準をどこに置くか、その水準を上げてリアルに寄るのか、あるいは下げてマンガ寄りにするのか、昔からそのあたりにこだわって観ているわけですが、最近で言えば「009 RE:CYBORG」が引っかかりました。

009の原作自体の問題点は前回の記事で触れました。で、今回の映画は予想以上に原作の本質を尊重していて、神山作品というよりは、神山監督解釈の009の「新作」でした。そうである以上、恥ずかしいくらい大味な話になってるのはむしろ当然で、009の映画としては良くも悪くもあれで正しいのです。話は映像がCGか手描きかどうかには関係ないです。手描き作画でよりマンガ絵テイストでも合うし、手描きセルアニメの味を生かしたCGを作るのがサンジゲンの目的なら、よりマンガ絵テイストのCGでも行けたはずです。例として正しくないかもしれないけれど「うーさーのその日暮らし」だってサンジゲン制作でしょう? 富野監督も指摘してた(http://d.hatena.ne.jp/char_blog/20121018/1350590801)、あの長いマフラーは分かりやすいツッコミどころなのですが、009のマンガ的記号としては、あのマフラーとコスチュームは必項なのです。つまり、言ってしまえば009は「マンガ」なんです。マンガ絵を逆手にとってリアルな描写をするならまだいくらか有りなんだけれど、今回の映像の「リアル度合い」の綱引き(リアルに寄るか、あるいはマンガ寄りか)が微妙なだけに、原作ファンでも観たあとにもやもやした感じが残りました。問題は映像の中途半端なリアルさ加減なのです(リアルに徹することが出来ないのです)。

まして、原作を知らない人には、あのマフラーの良さが分からないでしょうし、何より話がぬるすぎると感じられたはずです。同時期に武器商人の話の「ヨルムンガンド」があるだけに余計そうでしょう。
ちなみにマフラーは金田調の手描き作画が一番合います。単純に格好良さが映えます。そういう意味では、キャラまで手描きセルアニメ的なCGで描くという課題に「009」を選んだのはまだ結構冒険だったと思います。

宇宙戦艦ヤマト2199」にしろ、「コードギアス 亡国のアキト」にしろ、「超速変形ジャイロゼッター」、「ガールズ&パンツァー」等、リアルかどうかは別として、メカに関してはかなり表現としてこなれてきてるんですが。

「リアル度合い」の連想から言うと、「中二病でも恋がしたい!」が取り上げられてますが、個人的には「ガールズ&パンツァー」の方が気になります。「戦車道」とひねったネーミングの割に、ミリオタではない素人が観ても戦車の描写が単純に面白いので、住宅街での戦車戦で、至近距離から撃ち合ってたりして、中のキャラがケガをするのかしないのか、ミリオタ的に戦車のリアリティの点でどうなのかも分からないし。まあ、その後のシーンで、全身に所々斜線を入れた昔ながらのマンガ表現でススまみれ?程度になっているので、ケガはしないらしいし、たぶん作品のノリからいっても死ぬことはないレベルの「リアル度合い」なんだろうな、と思いました。「うぽって!!」の方がネタ的に狂っていて(「ガールズ&パンツァー」はあえて抑えてるんだと思いますが)、しかもネタだったのが終盤で「リアル度合い」がいきなり上がってバランスを崩してたので、比較の意味で余計に気になったのです。

中二病でも恋がしたい!」は現役中二病と元中二病の対の構造もあるし、「リアル度合い」の点から言えば、引いた目線の「ごっこ遊び」の楽しさがあると思います。逆に「K」は作品が天然で視聴者が突っ込んで楽しむ作品。


あとは個々の作品についていくつか。

となりの怪物くん」、「好きっていいなよ。」、「神様はじめました」。
今期の少女マンガ原作枠で、しかも似たようなシチュエーションで始まるという被り方が印象に残りました。「となりの怪物くん」はどうしても「カレカノ」を連想してしまいますが、「好き」の意味が恋愛対象としてなのか、「友達」としてなのかがごっちゃになっていて、キャラもそこに戸惑ってる感じ。「好きっていいなよ。」はケータイ小説的な飛ばし方。「神様はじめました」は安心して観られる大地監督のノリ。

イクシオンサーガDT」。高松監督はすっかり「銀魂」の人という印象が定着してしまったんだけれど、「ジャイロゼッター」の方で勇者シリーズのノリを復活させて欲しかったところもある。ただ個人的にロボットものはもういい気分もあるし、「ジャイロゼッター」自体、「カブトボーグ」的な見方をしてしまっているしなあ。

ジョジョの奇妙な冒険」、「リトルバスターズ!」。
ワーナー枠にして今期の原作再現重視枠。「ジョジョ」はすでにセリフがネタになってしまってる現状からすると、作り方としてはあれしかないでしょう。「リトルバスターズ!」は実は三年前に原作のゲームをやっていて、アニメにするのは相当難しいだろうと感想も書いているんですが(http://d.hatena.ne.jp/tobofu/20090403/1238758013)、どんな話だったか内容もかなり忘れかけてるので初見のつもりで観てます。

新世界より」、「てーきゅう」。
新世界より」はアニメ単体ではよくわからない、まあ、アニメ歴長いんでよくわからないアニメでもわからないなりに楽しむ術は身についているんで個人的には構わないんですが、がっつり付き合うには原作読むべきなのかもしれません。ただ、残念ながらその余裕がありません。構成もアニメ版なりに変えてるんでしょうか。その上、作画でもかなり冒険していて、スタッフの主張が比較的強い作品。例によって作画方面でちょっと文句を言われてるようですが、ニコニコでの配信のコメント観ながら感じたんだけど、絵だけの問題じゃなくて、キャラを構成する要素、性格設定からくる言動だったり(脚本演出面)、声優の芝居だったり、それら一つでもブレると文句を言われるようになってきてるんじゃないんですかね。つまり「キャラ」のブレにかなり敏感になってるのではないのかな、と。一方「てーきゅう」は板垣無双とも言われてる?ようにスタッフの個性が上手く回ってる作品。ショートアニメだから、という気も。たださらにその対局に、「ちとせげっちゅ!!」があったりするんですが。また、あまり盛り上がらなかったけれど「戦国コレクション」みたいにほぼ1話完結で回によって作風違ってたりとかはっきりしていれば作画を変えても受け入れられるのかもしれません。

さくら荘のペットな彼女」。
なんとなく「とらドラ!」に近いシリアスな痛さも感じさせる作品。「とらドラ!」レベルまで行くかどうかは分からんけれど、3話のコンテが神戸守さんで、まだJ.C.STAFFに関わってることが確認出来たので、個人的には神戸さんコンテ回がまたあるといいなあ。

ソードアート・オンライン」、「トータル・イクリプス」。
夏からの2クールもの?で、「ソードアート・オンライン」は今期からで言うと「BTOOOM!」みたいにバトロワ展開で行くのかと思えば、オンラインゲーム内で家族ごっこしたりして、何というか、まあ、ね。そういう夢を見るのもいいんじゃないんですか、と。いや、嫌いじゃないんですよ。「トータル・イクリプス」は原作関連はまったく知りませんが、作画も脚本、演出もグダグダなのを楽しんでます。スタッフには失礼かもしれませんが、そういうのも楽しめてしまう人間なんです私は(笑)。

「伏 鉄砲娘の捕物帳」、「劇場版 魔法少女 まどか★マギカ 前編・後編」。
「伏 鉄砲娘の捕物帳」はビジュアルは良いんですが、大河内脚本の特徴、全体の構成は上手いが話がスルスルと流れ過ぎて引っかかりが弱い所で、かつてのダイジェスト版と揶揄された「ブレイブストーリー」をどうしても思い出してしまう。「まどマギ」に関しては、来年の新作を観ないと何とも、というところなんですが、TV版ほぼそのままでありながら、総集編にありがちな無理な構成ではなかったのが良かったかな。初見の人間に優しかった。


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小黒祐一郎 アニメスタイル編集部

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