電脳コイル 13巻(最終巻)

電脳コイル 13 (トクマ・ノベルズEdge)
電脳コイル 13 (トクマ・ノベルズEdge)宮村 優子 磯 光雄

徳間書店 2010-11-18
売り上げランキング : 340


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

読了。伏線回収の嵐なので、あまり具体的には書けないが、上手くまとまった、と思う。
シリーズ中盤まではなかなか話が進まず、やきもきさせられたが、ドラマ的に破綻していたアニメ版「電脳コイル」の(設定や展開は違えど)「リベンジ」はほぼ果たされたといってもいい。その意味では、個人的には当初の期待通りに終わった。ただ、刊行順に付き合っていた身としてはここまで来るのに実に長かった、やっと溜飲が下がる思いで感慨深い。

以下、小説版シリーズ全体の感想を。
「拡張現実」の例として、本作(か、あるいは分かりやすいところでドラゴンボールスカウター等)がよく引き合いに出されるけれど、小説版の描写から分かる「電脳メガネ」は「拡張現実」と「拡張無意識」を掛け合わせたようなツールに近いと思った。

「拡張現実」だけだと「電脳メガネ」の設定面での必然性が弱いと思ってたんだが、最終巻にしてある種の「拡張無意識」装置でもあることが分かって納得がいった。

使い古された言い方になるけれど、ユング的な「集合無意識」空間(=「あっちの世界」)発生装置。

アニメ版の描写も部分的に違う解釈で使われていたりするので、アニメ版の「電脳メガネ」のツール的な意味合いでも似たような解釈が出来ると思う。

電脳コイル」という言葉の意味も明らかにされるし、小説版独自の、「電脳メガネ」の効力は13才でリミットを迎えるという制限設定もちゃんと理由がある(描写の関係上、リミットを越えても効力が切れない、あるいはメガネなしでも能力を持つ者がいるとか、わりと設定はあいまいにしてあるけれど)。

それはたんに設定面だけでなく、思春期小説としてのテーマと繋がって最終的な落としどころまで行っている。

思春期を迎えた子どもにとって「電脳メガネ」は魅力的な「玩具」でもあるし、もっとも心が不安定な時期、思春期であるからこそ、「拡張無意識」装置でもある側面は子どもたちに強い影響を与え、彼らの内面を揺さぶる。内面そのものに直面させられてしまうツールでもあるから。

シリーズ前半は、ヤサコ、イサコ、フミエやダイチなど、メガネ現役世代が対立しつつもしだいに「仲間」になっていく過程。後半はそこにタマコや猫目などメガネ先行世代が徐々に関係してきて、終盤では互いに協力しあい「電脳メガネ」の謎、そもそも「電脳コイル」が引き起こした事態に対処するうちに、メガネに関わったことで暴かれる各キャラそれぞれの抱える問題を、それぞれそれなりに解消する、あるいは立ち向かうことに至る。

展開としては、一応危機らしきものは収まるが、まだ引きずる問題もあるようで、スピンオフ的に続編が可能な内容になっているし、もしかしたら外伝の形で続くのかもしれないが、個人的にはアニメも含めて「電脳コイル」に付き合うのはこれで終いにしようと思う。


とにかく、納得できるラストだったので、今はホッとしている。



アマゾンとセブンネットショッピングで購入限定特典があるようです。
http://www.tokuma.co.jp/coil/novel.html