電脳コイル 12巻

電脳コイル 12 (トクマ・ノベルズEdge)
電脳コイル 12 (トクマ・ノベルズEdge)宮村 優子 磯 光雄

徳間書店 2010-07-31
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starクライマックスに向けて

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やっと前巻の11巻で話がテンポアップしたと思ったら、
電脳コイル|磯光雄監督作品 - 小説『電脳コイル』 三番目のユウコ通信
次の13巻で完結だそうですよ!
今思えば、巻きが入ってたのか?と邪推したりしますが、作者自身本筋はオチをつけるけども、キャラをもっと掘り下げてそれは外伝にしたいとか言ってますので、あながち当たらずとも遠からず、かなと思います。

たぶん、キャラの掘り下げを抑えて、とりあえず本筋を片付けるために、展開が早くなったんだろうと。
そう考えると、まあ、なんと言いますか、今まで読んできてだいたいわかったんですが、どちらかというと、これは前にも書いたかもしれませんが、キャラの心情描写にページ割きすぎ、ぶっちゃけていうと「キャラ萌え小説」に近いかな、という結論になりそうです。いや、背景レベルで本筋はちゃんとあるんですよ。問題はそれが次の13巻でまとまるかどうか、なんですけどね。

そこに失敗すれば、ただの二次創作的「キャラ萌え小説」で終わってしまう。
アニメ版がやっぱり、「作画アニメ」とは言いませんがビジュアルの面白さだけで終わってしまったように。

ただ、さすがにいわば「キャラ萌え小説」だけあってメインキャラの、ヤサコ、イサコ、ダイチ、フミエ、その他のキャラの魅力は十二分過ぎるほどあって(すでに書きすぎていて)、そこは良いんです。しかし、「キャラ萌え小説」ってのは話があまり進まないか、ループしがちというか、そういう側面もあるわけです。喧嘩したりもするけれど前提として「仲間」だから云々、みたいな関係(日常)が延々続く、とか。


本筋は、電脳メガネなしで電脳力を持つヤサコの妹の京子をイサコの幼少時とかぶらせ、アニメ版での「ラスボス」の猫目を、イサコの兄に入れ替え、「あっちの世界」から生還したものの、こん睡状態、眠り姫状態になっているハラケン、そのハラケンを猫目やイサコの兄、タマコと同じメガネ先行世代のヨシフミとダブらせる。京子がイサコと同じメガネなしでも能力をもつということが12巻の物語の主たる駆動力になっていて、イサコの兄が京子を狙う。イサコは兄のことをどうしようもないと思ってはいるものの、兄の人生を誤らせてしまったという過剰な自責の念が彼女を兄から離さない。京子が狙われれば、当然ヤサコが動く。そしてイサコとヤサコの対決。そんな流れ。


電脳メガネに有効期限がある、という小説版独自の設定からくる、リミットが切れたメガネ先行世代と現役世代との世代間闘争テーマは弱いし、メガネからの卒業=おとなになる、ということでもない。あるいはそう単純なことでもないのか。昔、特殊能力が切れる=おとなになることを強く描いた、神林長平の「七胴落とし」みたいなのを期待したんだけれども、それほどでもない。そいうことではなくて、年齢に関係なく各キャラが抱える問題が絡み合うことから生まれるドラマ、と言った方がいいかもしれないです。


まあ、とにかく最終巻の13巻を待つしかないですね。
そこで最終的な感想を書きます。


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