アニメ定点観測2009

いわゆる今年のアニメを振り返る的なものを考えてみるわけだけれども、個々の作品をちゃんとチェックしていれば、それなりに細かく書けるのだろうが、まともに観てなかったりするので、かなり大雑把なことしか言えない。

しかし、大雑把でも言える変化はあった。
今年の前半と後半でのアニメ状況の印象が、大きく違った。それは誰しもが思うであろう、夏以降の小規模公開の劇場版アニメの本数の増加による。しかもその傾向は来年まで続くらしい。

個人的には、この後半からの変化で、前半で比較的話題になったり騒がれたもの、たとえば「とらドラ!」なり、「バーディー」二期の作画崩壊騒ぎなり、「けいおん!」から始まる部活ものの流行だったり、それらすべての印象が弱くなった。

逆に強くなった印象は大雑把に「テレビから劇場へ」ということだろうか。しかし、かつてのように、劇場版だからテレビよりクオリティが高い、付加価値があるというよりは、テレビのフレームが劇場のスクリーンに移っただけ、のような気がする。

それには、たとえば実況行為をするためにテレビでアニメを観ることはあろうが、それは結構ながら観的であり、基本的にアニメを観るのに別にテレビ放映でなくてもよくなった、という背景があるからだろう。ほかに観る手段はいくらでもある。遺法な方法も含めて。

そのために、大きなブームになるには今まではテレビ放映が大きな力を持ってはいたのだが、テレビの力が弱まっている現在、テレビ発で自然にはなかなかブームは起こらないし、起こそうという仕掛けもだんだん通用しなくなってきてると思う。一番分かりやすい例を挙げれば、ハルヒの「エンドレスエイト」編であり、上記の背景から「テレビ放映」を逆手にとって変化球を投げても通用しなくなったということだろう。
加えて、ここ数年の、「らきすた」「マクロスF」「コードギアス」等の過剰に煽って引き付けて祭り状態を作り出そうとする方法がそろそろ通用しなくなったというのもあるかもしれない。

一時的には話題になるかもしれない、売り上げもあるかもしれない、しかし長くは残らない。

BD化プロジェクト(詳しくは知らないのだが)関連で、「true tears」が再び話題になっているけれど、他のBD化希望作品名を見ても、実際にBD化されるかどうかはさておき、やはり後々まで残る(記憶に残る)作品は強いと思う。やはりそれが基本であって、なんのかんの言ってもそこに行きつく。個人的には今年のテレビアニメでいえば、たとえば「青い花」あたりを入れてもいいと思う。劇場アニメでいえばなんといっても「マイマイ新子と千年の魔法」がそうだろう。

これは、あとから評価されるのではなく、ただでさえこの不況下に、とにかく今売れる作品を作らなければならない側としては辛いことだろう。余談になるかもしれないが、「マイマイ新子」を観た時に(客の入りのあまりの悪さも含めて。それは宣伝のせいだけではなく、作品の性質にもよると思うが)、そこで初めて細田守が「時かけ」に続いて、今積極的に世に出て行くためには「サマーウォーズ」がああいうあり方(お祭り的な一体感を喚起させるもの)にならざるを得なかったのが理解できた、というのもある。


今後アニメはなくならないが、アニメの視聴方法が多様化したために、大きなブームは最初のエヴァ以降、未だに来ないだろう。
エヴァ以降来ていないということに関して多くの異論がありうることは十分承知している。また大きなブームが来る可能性はまったくのゼロではない。ただし、過去からの経験則から考えてどうみても来そうにない、というだけで、予想もしてなかった方向から来る可能性もあるかもしれない。

あるいはもう開き直ってブームなんか必要ない、と割り切ってもいいのかもしれない。

さらに言ってしまえばエヴァ以降どころではなく、最初のアニメブームを起こした「宇宙戦艦ヤマト」まで遡り、主に「テレビアニメ」発のアニメブームという点に絞って、かなりの長期スパンで見た時に、ゼロ年代も終わり、2010年代(一部ではテン年代と呼称されているが)が始まろうとしているこの時に、ようやく「テレビアニメ」発のアニメブームの一区切りが来たと思っている(「テレビアニメ」発のアニメブームの終わり、とはあえて言わない)。その意味で今年の最後に、空飛ぶゆうれい船のごとく、亡霊(「太平洋の亡霊」でもいいけれどw)のようにやってきた「ヤマト復活篇」はあまりにその「区切り」として象徴的ではあった。



個人的には、今年のオチとしてはそれがすべてであったと言ってよい。