「コメットさん☆」と「鎌倉」

コメットさん☆」の舞台が鎌倉である理由。あるいはコメットさんが何故「鎌倉」に来たのか、その理由。

放映後に刊行されたムック、「メモワール・ド・エトワール」の神戸守(監督)×おけやあきら(シリーズ構成・脚本/故・桶谷顕)対談で一つの「解釈」として語られている。

神戸:最終的に鎌倉を舞台に据えたのは、自分としては日本的な雰囲気を出したかったからなんですよ。

おけや:鎌倉を舞台にするのなら、本当は神社・仏閣といった歴史に関する建物をキチンと描かなくてはいけないんです。でも、そうすると作品を海外に輸出できなくなってしまうので、却下されてしまったんです。本当はそういう歴史的な建物を、第1話では全面に出すつもりだったんですよ。

おけや:実は僕は鎌倉を舞台にすると聞いた時、猛反対したんです。僕が鎌倉の出身なので思い入れが強過ぎるということもあるのですが、他にも理由があるんです。実は鎌倉は“霊魂の街”とも言われていて、本当は暗さも併せ持つ街なんですよ。でも、それを聞いた神戸監督は「いいですね〜」って(苦笑)。それを描くのは無理だけど、まあ、折れて…劇中では重い雰囲気をなるべく排除した形で出すことにしたのです。

神戸:画面を柔らかくしましょう、と。自分の好みで言えば、リアルな感じの方が好きなんですが、それではおそらく女の子には好まれないでしょうから。

おけや:風岡家の夫婦の亡くなった娘が、メテオそっくりだったことが分かるエピソードがありましたよね。それで、星国はあの世かもしれないという設定が考えられた時があったんですよ。今から考えると鎌倉が舞台だったことを意識していたのかもしれないですね。

コメットさん☆」という作品が好きな人で、この解釈が受け入れられない人はいるかもしれないが、一応必然性はある。

コメットさん☆」において、作品の性格上、神戸さんの「鎌倉」に対する思い入れよりは、おけやさんの「鎌倉」に対する態度の方が比較的強く出ている。

それは、同ムックのおけやさんの以下の発言に集約されている(実際、劇中でケースケにほぼ同じ主旨のセリフを言わせている)。

おけや:僕は鎌倉出身なのでよく分かるんですが、この街は本当に居心地がいいので、ずっと住んでいるとぬるま湯的な感覚に陥ってしまうところがあるんです。僕もそうでしたが、真に成長したいと思うと、そこから離れようという気持ちになるんですよ。あ、もちろん好きだからこそずっと鎌倉に住み続けている人もたくさんいますけどね(笑)。

一方で、今から思えばだが、神戸さんはこの後に、「エルフェンリート」で鎌倉の持つ「暗さ」を取り入れている。
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以前、
「青い花」と「コメットさん☆」 - トボフアンカル・ミニ・メディア(T:M:M)
でも触れたが、実在の場所(あるいは時代)を背景に使ってリアルさを出そうとするアニメが多い中、それにしてはそこを選んだ必然性のようなものが感じられなかったりするので、いまさらだが、「コメットさん☆」の場合はどうだったか、書き留めておいた方がいいな、と思ったので書いた。

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