TVアニメ定点観測2012年5月初め現在・アニメの様々な「文脈」

シンプルに各作品ごとの短評でもいいんですが、数も多いし、どの作品も等しく距離を置いて観ているのでやっぱり全体状況から個人的に思うことなどをいくつかの作品から少し。

AKB0048」と「氷菓」ですが、今のところ「AKB0048」はPVのみ、「氷菓」は第3話1本のみしか観ていません。その程度ですが、気になっていることを少し書きます。昨年あたりからの、「放浪息子」、同じあおきえい監督作品で言えば「Fate/Zero」、今期のその2期。また岸監督の「神様ドォルズ」だったり、「ペルソナ4」。そして「ちはやふる」等、原作を知らなくても楽しめて、かつ原作ファンも満足出来る作品の数が安定して増えてきている文脈があって、4月の新番組だと、何と言ってもたぶん「坂道のアポロン」がその文脈に来るだろうと思いますが、そんな中で、「AKB0048」と「氷菓」はどういう位置付けになるんだろう、とちょっと気になります。

細かく見ると、「氷菓」に関しては、原作者の「米澤穂信」という文脈と、アニメ制作の「京アニ」の文脈の二つがあります。個人的には米澤穂信氏についてはまったくわかりません。京アニに関しても、作品はそれなりに観ている方だけれども、あまり詳しくありません。
AKB0048」もほぼ同じで、「AKB48」という文脈と、アニメ制作側の、河森正治作品の文脈の二つがあります。「マクロス」や「アクエリオン」等、河森作品については個人的にそれなりに知っている方だと思いますが、「AKB48」についてはまったくの無知です。要はそれぞれの、二つの文脈を押さえてなくても楽しめるのかどうか、という点です。そうでなければ、どの文脈に立つかでかなり評価が分かれるんだろうな、と思います。「氷菓」はまだ1話分だけでは評価しにくいし、「AKB0048」は特にそうだろうと思います。いずれにせよ、両作品とも何らかの媒体で観ていくつもりです。

エウレカセブンAO」と「輪廻のラグランジェ」。
ロボットものの文脈です。「輪廻のラグランジェ」は夏にすぐ2期があるので継続中と考えていいかと思います。「元気が出るロボットアニメ」を目指したそうですが、ロボット要素なのか、萌えのようなものなのか、お話はともかく、何を一番見せたいのかがはっきりしない作品でした。並行して放映中の同じ佐藤竜雄監督の「モーレツ宇宙海賊」がロボットものではないものの、「SF性」という文脈で他作品を圧倒しているだけに、余計に弱く見えます。「エウレカセブンAO」は前作のテレビシリーズ、劇場版との設定的な繋がりは特に気にしませんが、その代わり、沖縄を舞台にしてたりして、問題意識の要素を入れるのはいいけれど、ドラマとして処理しきれるのかな、とそっちの方が気になります。脚本で今回、會川昇氏が関わっているのを見て、一応何となく納得したんですが。

會川昇と言えば、知人の薦めで「UN-GO」をレンタルリリースのペースで観ました(「因果論」はまだですが)。同じボンズ制作で監督は水島精二會川昇のクセの強い脚本を口当たり良く、非常に観やすい作りになっているのが好感触。ノイタミナ枠だったから、ということもあったのかもしれません。3.11以降の問題提起を、実にストレートなやり方で展開しているような印象でした(表層的すぎるきらいもなくはないですが)。「エウレカAO」も問題意識の部分では似たようなところがありそうで、「沖縄」を扱いながら、裏テーマでは「福島」の問題も含んでいて、またえらい物に手を出したな、というのが今のところの感想です。なので「エウレカAO」については、個人的には、ロボットものの文脈ではなくて、會川昇脚本の文脈で観ていくことになるのかなと思います。

ガンダム」の新作も作るたびにそうでしょうが、ロボットものの、ジャンルとしての歴史(文脈)を意識すればするほど、作りにくくなるというか、自由度が失われていく感じがします。一方で魔法少女ものというジャンルがあって、例えば「ストライクウィッチーズ」や「戦姫絶唱シンフォギア」などが魔法少女ものの文脈に入るかどうかは微妙ですが、逆にそのへんを曖昧にすることで何でもあり的な自由度を獲得出来てる気がします。

だから、「輪廻のラグランジェ」はたぶんロボットもののジャンルを意識しない、という方向性だったのかもしれませんが、その代わりに、何らかのこだわりだったり、熱量みたいなものが足りなかったのかな、と感じます。

その他、吉野弘幸脚本で「アクセル・ワールド」と「ギルティクラウン」の比較とか、「宇宙戦艦ヤマト2199」は新作アニメで年寄りの居場所を獲得できるのか、等々ありますが、今回はこのへんで。