第27話『ケースケの夢の実』

■それぞれの「収穫」

今回は「収穫」をキーワードに主に、メテオさん
が「『輝き』の循環」の「環」の中に受け入れら
れるという「収穫」と、逆に「ぬるま湯」的なそ
の「環」からあえて外に出ようとするケースケの
「収穫」を応援するコメットさんの二つの「軸」
で構成されています。

星国での収穫祭を懐かしみ、地球でも収穫祭を発
案するコメットさん。
「知らない人同士を仲良くさせる」収穫祭。ミラ
カロンが明日香のバトンチームに誘われたり、
鹿島さんと優衣さんがいい関係になったり、ムー
クまでもがラバボー、ラバピョンと仲良くするの
を見てメテオさんはこれはコメットさんが自分を
孤立させる作戦だと判断。その手には乗らないと
ばかり「環」の中に入っていきます。収穫祭に参
加する「フリ」をするわけですが、この「フリ」
が本当に喜ばれてしまうという結果になってしま
います。

つまり、コメットさんの行動の裏をいろいろ勘ぐ
ってちょっかい出してる間に、コメットさんが関
わっていた事態、事件そのものを解決してしまう、
というパターンです。この同じパターンで藤吉家
を中心とする「環」の中に入っていき、なんと
「孤立していた自分」そのものを解決してし
まう。

そして次回以降、メテオさんは優衣さんの手伝い
をすることになったり、コメットさん抜きでツヨ
シくん、ネネちゃんの願いを叶えることになった
り、他のキャラとの関わりが増えていきます。

メテオさんの場合、この(コメットさんにしてや
られまいと)女王的メンタリティで動いたら裏目
に出たというパターンが、彼女の内面の素直さを
少しずつ引き出していった、と言えるかもしれま
せん。

一方、この収穫祭での人々に逆行するかのように、

「この街が居心地良すぎるから、ぬるま湯にどっ
ぷり漬かってちゃ、ダメなんです」

というセリフを言うケースケ。
彼のライフガードになるという「夢」を達成する
ためには、「居心地の良すぎる」この作品の舞台
は逆に自分をきたえるには不似合いだったのでし
ょう。ただそれだけでなく、3〜4歳と12〜3
歳ではそれぞれ描写に違いがあると前に書いたこ
とと関係しますが、たぶんこの作品世界が3〜
4歳にとっての「楽園」であるために(そし
て「大人」たちがそれを壊さないよう維持し
ているために、あるいはそれが所詮、「大人」
の「感傷」であるために)、12〜3歳のケ
ースケにはそれが鬱陶しかったのだろうとい
うのもあるだろうと感じます。つまりケースケ
は「大人」が作ってくれた「モラトリアム」の外
に出ようとしている。そういう側面もあるだろう
と思います。

コメットさんはケースケにもケースケなりの「収
穫祭」(ライフガードの選出大会)があると知りま
す。ですが素直に応援に行けない。この二人が22
話で仲直りをしたにせよ、ぎこちない関係のまま
なのは、二人が「恋愛関係」になかなか移行でき
ないからです。とくにコメットさんは「恋」とい
うことをわかっていません。
ケースケの「輝き」を応援したいという気持ちと
(自分のなかで認めがたい)「好き」という気持
ちのあいだで揺れているために、ケースケのこと
が気になりつつもアクションを起こせないわけで
す。今回そのアクションを起こさせるのが、「環」
の中に入った「フリ」をしたメテオさんの行動で
す。彼女の行動からコメットさんは自分を納得さ
せるヒントを得ます。

「そうなんだ。木や草たちがおいしい実をつけて
くれたのは、夏のあいだに強いお日さまをいっぱ
い浴びて、風を受けてきたえて、がんばった証し
なんだね。だからいまは、風やお日さまもこんな
にやさしく祝福してくれてる。
きょうは風になろう。
それなら会いに行けるよね」

この納得のしかたがコメットさんの「収穫」と言
っていいだろうと思います。(2002/08/13記)