第21話『ミラクル恋力』

■コメットさんの『恋力』
「好き」という「気持ち」について考える/その3


前回20話のラストで、お土産のチーズをケースケ
に渡そうとするコメットさん、背が伸びて少し大
きくなったケースケにドキドキする。これがきっ
かけで二人はお互いを強く意識しはじめます。ケ
ースケのほうはいつもと変わらず、コメットさん
に接しているつもりで、藤吉家でいっしょに食事
するとか、以前なら、何でもないことだったのだ
ろう、それが、いきなりケースケのほうから近づ
かれるように感じられて、何故かとまどうコメッ
トさん。ケースケは、距離をとろうとする彼女を
見て、自分が避けられているのではないかと感じ
てしまう。

ラバピョンの家を建て直すために、スピカおばさ
まのペンションがある高原へ。ラバボーとラバピ
ョンのラブラブな気持ちがまたしてもラブリンモ
ードを発動させ、とまどうコメットさん。

コメットさんがラブリンモードになってとまどう、
という描写は、そのまま、「恋」する「気持ち」
がありながら、それが「恋」だとはわからない女
の子のとまどう姿、とも読めます。
その意味では上手い設定、表現だと思います。

『恋力』とはつまりは「恋」の「概念」だと前回
書きました。今回、まだ「恋」を知らないコメッ
トさんに、スピカおばさまが「恋」とは何なのか
を教えます。

「恋してるとね」
「はい?」
「いままでの世界が違う世界に見えてくるの」
「…そ、そうなのかな…」
「いままで気づかなかったことに気づいたり、何
気ないことがとってもすてきなことに思えて、気
持ちがあったかくなったり、それにドキドキした
り、ときには涙が出そうなくらい、悲しくなった
り」

「ドキドキした…」
ケースケのことを思い浮かべるコメットさん。

「ラバボーはきっとそういう状態ね」
「…あ、そうか、ラバボーがここ(ティンク
ルスター)にいたから、それでラバボーの
『恋力』がわたしにもそんな気持ちを起こさ
せちゃったんだ」
「…え?」
「なあんだ、勘違い。バッカみたい。ア
ハハ」
「おもしろい子ね、コメットは」
「…あ! じゃあ、ケースケに悪いことしちゃっ
た」


あくまで自分の気持ちを「恋」だとは認めないコ
メットさん。一方そのころ、メテオさんはイライ
ラ気分の解消か、ヒマつぶしか、多少は好感を持
ったのか、ケースケを攻略中。そこへ割って入る
謎のライダー。
思わず危険からメテオさんを守るケースケ。

この謎のライダーは、今回の21話では脇の存在で
す。役割としてはケースケとメテオさんを一時的
にくっつける「道具立て」にすぎません。ですが、
メテオさんとの会話でのライダーのセリフ、

「助けてほしいんだ、ぼくを助けて」
「ぼくの正体…それがわからないんだ」

というのは、「王子様は誰なのか」という「引き」
をより視聴者に意識させる意味と、その王子様の、
「自分を見失っている」という後のテーマにつな
がる象徴的な意味、二つの意味があります。
ですから、今回においては本筋ではありません。

ライフセーバーの性分なのか、メテオさんを心配
してやってくるケースケ。ケースケに悪気がなく
ても、これはコメットさんを傷つけてしまう。

「なんかわたし…無視…されちゃった、みたい…」

夜。
「なんだろ、この気持ち」
「会えないのはさびしいぼ。ラバピョン〜」
「ああ、ラバボーの気持ち?」
ラブリンハートを外すコメットさん。
「ごめんね。眠れなくなっちゃうから。おやすみ」

これはラバボーの「気持ち」なんだから、ケー
スケとはまだ大丈夫。

「やっぱ眠れないや」


ラスト。浜辺で。
「…どうして、どうして、返事くれないの?」
「おれのこと、避けてただろ?」
「え? ああ、ごめんね、あれは勘違い。わたし
…」
「いいんだ。おれのこと嫌いなのは知ってるさ。
無理に仲良くしてくれなくっていい」
「え…」
「行けよ」
「…ケースケ」


あたし、傷つけちゃった、ケース
ケのこと。


ラバボーとラバピョンとは対照的に、お互いがお
互いのことを意識しすぎて、かえって距離が出来
てしまうコメットさんとケースケ。


…終わりだな、夏も。


このせつなさが圧巻。演出は佐士原武之さん。
(2002/06/30記)