第17話『メテオさんの涙』

■メテオさん孤立の構図→星の導きによる救い→
 「泣き」?


コメットさんは「成長」しないキャラであり、そ
の対立項としてのメテオさんは「成長」するキャ
ラである。しかし、メテオさんの「成長」とは何
なのか。「大人」になるということなのか。これ
までも、メテオさんは早い段階から妙に「大人」
っぽい表情をすることがある。それはどういう時
か。それは星国の「王女」としての「役割」(と
彼女が考えている)を果そうとしている時である
が、それは親から教育された、「女王的メンタリ
ティ」、帝王学的なものの結果のようにも思え、
表層的なものかもしれない。
だとすれば、深層では(メテオさんの)「子供」
の部分がそのまま抑圧されて、表にうまく出てこ
れないということかもしれない。なかなか素直に
なれない、というのはそのためかもしれない。
つまりは、「大人」びたところが表面的であると
するならば、まずはメテオさんの「子供」的部分
(本当の自分=「輝き」)を解放(発見)しなけ
ればならない。でなければ、本当の意味での「成
長」はない。
コメットさん☆』ではとりあえず、メテオさん
の、「女王的メンタリティ」からの「解放」が描
かれている。


と、これまでメテオさんについて書いてきた部分
のまとめをよくある心理分析風に書いてみました。
今回の話はメテオさんの「解放」の第一段階、と
言えます。

まずメテオさんの「孤独」が強調されます。もと
もとメテオさんは地球に失踪した「王子様」を探
しに来た(それもコメットさんに対抗意識があっ
て)のであり、「輝き」を探しに来たわけではあ
りません(「王子様」が「瞳に輝きを持つ者」で
はあっても)。ですがコメットさんのまわりでは
コメットさんが多くの「輝き」を持つ人と関われ
ば関わるほど、「輝き」の「輪」、「輝きの循環」
が出来上がっていく。それがメテオさんには理解
出来ません。だから、「輪の中」には入れない。

これまでも、木の枝に座って藤吉家を見下ろす
(俯瞰する)位置によくメテオさんはいました。
今回はしょっぱなから野球の試合のシーンで、俯
瞰の位置にいます。「輪の中」に入れないことを
象徴的に示す構図です。その後バーベキューのシ
ーンでも同じ構図がくり返されます。そこでは、
とうとう、くやしさから、雨を降らせて、その幸
福な「輪」を壊そうとさえします。

「だって、コメットさんは藤吉家の一員だもんな
あ」

景太朗パパのセリフのあと、メテオさんの悲しそ
うな表情につながる流れに注意してください。
「泣き」の展開が始まっています。
そしてパニッくん兄との会話。

「何故ってお友達じゃないですか」

この言葉に神経を逆なでされるメテオさん。脚本
も今回は珍しくわかりやすく段階を踏んできてい
ます。
次に、キヨッチと明日香の「輪」を裂くように入
ってくるメテオさん。
わかりやすい。わかりやすすぎる(笑
やけになったメテオさんは風岡夫妻も追い出そう
とする。しかし、その行為に賛同しない、ムーク
と星の子たち。

一方、藤吉家、コメットさんが「泣き」について
語る。

「でもみちるちゃんはなきむし」
「すぐなくよ」
「泣いてもいいんだよ」
「いいの?」
「どうしていいの?」
「我慢したらよけいつらくなっちゃう」
「へえ〜」
「星国の泣きビトさんは、すぐ泣くの。ちょっと
したことで泣くの。お天気が悪いだけでも泣いち
ゃうんだよ」
「…でも、泣いたらすぐ気持ちを変えるの」
「ははは。コメットさんは面白いことを言うなあ」
「泣いてストレスを発散するのね」

…今回の「かいせき」は楽だなあ(笑

後半、コメットさんに助けを求めるムーク。
浜辺、星の子にまで見放されたと思い込むメテオ
さん。ぎりぎりまで孤独感を強調。

そこへ、謎のライダーが登場、この段階ではライ
ダーが「王子様」かもしれないという「作劇」上
の「引き」もあるので、すべてを失った(と思っ
ている)メテオさんは本当の自分の気持ちをさら
けだし、ライダーに救いを求めてしまうかという
瞬間、コメットさんからの星力の充電で、急に強
きになるメテオさん。
風岡夫妻も助けに入ってくる。
これを邪魔しに来たと取ったメテオさんは、

「あんたたちみたいな人を、親に選ぶんじゃなか
ったわ」

これが引き金となり、真実を語る風岡幸治郎。

「メテオ、おまえはわたしたちの娘だ。そう信
じているのだ」
「そう、そうですとも」
「おまえがなぜメテオという名前になったか知ら
ない。けれど、帰ってきてくれたんだろう?」
「そうよ、あなたが帰ってくれたあの日から、わ
たしたちは、今度は大切にって…」

畳み掛けるように、
風岡夫妻はかつてメテオさんに似た娘を失ってい
ること。メテオさんがこの家を選んだのは偶然で
はなく、星の子の導きによって、「縁」がちゃん
とあること。夫妻は娘に帰ってきてほしい、と願
っていたから、星の子はその願いをかなえ、夫妻
はメテオさんの「洗脳」に素直にしたがった、あ
るいはその「フリ」をしているようにも読めるシ
ーン。

最初から、メテオさんは「独り」ではなかっ
た、という「救い」。

「家族」という「輪」にはじめて受け入れられた
(と、自分で意識できた)メテオさん。
視聴者の「泣き」のクライマックスのタイミング
に合わせて号泣するメテオさん。


この回でボロ泣きした方々が多い、というのは有
名な話ですが、もう「泣き」の公式どおりの流れ
なので、これ以上言うことはありません。
(2002/06/09記)