桜庭一樹:少女七竈と七人の可愛そうな大人

読了したのでも一回とりあげる。結論から言うと俺には物足りなかったかな。
アマゾンのあるレビューを引用。

七竈の母、川村優奈は平凡な女性ながら数多くの男と交じり、子を宿した。
昭和の田舎にあってこの行為は忌むべきものであり、その結果生まれた七竈は肩身の狭い思いをすることとなる。
輪をかけて不幸なことに、母に似ることなく彼女のかんばせはあまりにも美しく狭い田舎社会では悪目立ちしてしまう。
しかし、そんな彼女にも唯一心を許せる幼馴染が居た。
同じように美しすぎる美貌をもった男の子 雪風 である。
ちょっと古風で丁寧な話し方をする七竈。
あまり口を開くことはないが、多くの時を七竈と共に過ごした雪風
家を空けることが多くなり、遂には育児を祖父に任せ放浪を続けるようになる淫乱な母。
小さな彼女らは青春期特有の永遠感を抱き、この時がずっと続くものだと信じていたが…。
優奈の奔放に巻き込まれた大人たちと、最大の被害者である子供が織り成す少し悲しく儚い恋愛物語。

うーん、情緒豊かな作り込み。
何か環境が変わるきっかけが起こるわけでもなく平凡な日々を過ごしているのに、徐々に同じでは居られなくなる心情の移ろい。
そして、便宜上恋愛小説とは言ったものの、強く熱く想いを寄せる恋があるわけではなく少し様相を異にする風情がある。
良い意味で同じ人が『GOSICK』を書いているとは思えない(笑)。

どちらかというと物語の深みで魅せるよりは、文体の情緒で魅せる感じか?
例えて言うと、絵画の色遣いで魅せるといった感じか。

そいう文脈にならうとすれば、俺が良かったと思えたのは以下の部分。

「七竈の木のことも、すこぅし、話しました。秋の収穫の季節になると、真っ赤な実をたくさんつけて誘うのですが、かたくって、とても食べられないそうです。渡り鳥などにも食べられないまま、やがて冬になって、雪が舞います。赤い実に雪が積もって、誰にも食べられないかたい、かたくなな実は、真っ赤に輝いて、ただいつまでも美しい」
「へぇ」
「そして、そのまま朽ちるのだそうです」
(略)
「わたし、赤いまま朽ちる、七竈の実にはなりません。わたしは熟して、食され、わたしを食って羽ばたいた鳥の、やわらかな糞とともにどこか遠い土地に種を落として、また姿をかえて芽吹く。そういう女になろうと思います」

少女七竈と七人の可愛そうな大人
少女七竈と七人の可愛そうな大人桜庭 一樹

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