第22話『ゼツボーのラバボー』

■「恋」という「輝き」
「好き」という「気持ち」について考える/その4
今回は20、21話と続いてきた、「『恋力』編」
の一応の完結編です。前回21話で気持ちがすれ違
ったままのコメットさんとケースケ。二人の「仲
直り」を、ラバボーとラバピョンとの関係をまた
「補助線」にすることで描いています。そして、
コメットさんが「好き」という「気持ち」や「恋」
についてどう考えているかがはっきりします。

ラバピョンにうつつを抜かし、姫さまの役に立っ
てないラバボーを懲らしめるためか、あるいはヒ
ゲノシタ自身が「恋は熱病のようなもの」と言う
ように、ラバボーの「恋力」がコメットさん自身
に悪影響を及ぼすのを避けるためか、ラバボーは
「絶望の黒い星」の中に入れられそうになります。

そして、ラバボーを守るためにコメットさんも
「黒い星」にいっしょに入ってしまう。ラバボー
は「黒い星」の中で「恋」する「気持ち」を失っ
ていきますが、コメットさんはただ「意欲」を失
っていくだけです。
ここは「絶望の黒い星」の「機能」としてはおか
しい、と感じられるかもしれません。
なぜ、コメットさんの「恋」の「気持ち」が消え
ないのか。

面白いのは、コメットさんの、ラバボーの「恋力」
のせいで自分もドキドキしてしまうのではないか、
という「勘違い」が、そのまま「恋力」の設定ー
「他人に影響を与える」ーになりかけていること
です。
ヒゲノシタの考えがまさにそれに沿っていますし、
のちにメテオさんに「恋力」が初めて発動すると
きも完全にそういう「機能」です。

ただ、ケースケだけが、今回の前半で無自覚であ
るにせよ、

「人のせいにするな」

とつっこんでいます。ケースケも自分の「気持ち」
をどうしていいかわからず、でも薄々、自分はコ
メットのことが「好き」なんじゃないか、とわか
ってくる。

一方でコメットさんは、そうはならない。
あくまでラバボーの「恋」する「気持ち」を大切
にしたい。他人の「恋」を大切にしたい。

「絶望の黒い星」の中でのコメットさんと、ラバ
ボーの会話を良く聞くと、「恋」する「気持ち」、
その「輝いている状態」、「輝き」が吸い取られ
ていくのだとわかります。
すると、コメットさんは自分の「好き」の「気持
ち」を「好き」、あるいは「恋」だとわかってい
ないので、ただやる気を無くすだけなのか。
あくまでメインはラバボーであり、いろんな「恋」
の「輝き」を探し、受け取って、元気を取り戻す。

「…なんか楽しそうだぼ」
「そうだよ、恋ってきっとたのしい…これは?」
「…恋の『輝き』」
「恋の?」
「ちびっとだけ元気もどってきたぼ」
「うん。元気のもと」
「もっともっとさがすぼ〜『輝き』」

このシーンでキヨッチと明日香が登場しているこ
とからわかるように、これは11話で書いた、「輝
き」の「循環」です。

「輝き」を持つ人は、他人をも「輝かせる」、
「元気」にさせる。その「循環」。

「恋力」もまた例外ではない。「恋」の「輝き」
もまわりを「元気」にさせる。
ただこう考えてしまうと、先ほどの「恋力」の
「機能」を正当化してしまうことになり、コメッ
トさん自身の「恋」の「気持ち」はうやむやのま
まということになってしまいます。

つまり、やっぱり、コメットさんは自分の「気持
ち」が「恋」だとは気づくことはない。

コメットさんとラバボーが「黒い星」から出るに
はラバピョンの「恋力」が一番であり、例の、メ
テオさんがコメットさんの行動にちょっかいを出
し、結果的に事態を解決してしまうパターン(今
回、ちょっとひねってあるのは、ツヨシくん、ネ
ネちゃんがメテオさんの性格パターンを読んで、
彼女を誘うというシーンがあること)で、二人は
「絶望の黒い星」から出ることが出来ます。
そして、コメットさんはこう言うのです。

「それに、『絶望の星』から抜け出すことだって
できたんだもの。『恋力』ってすごい。『恋』っ
てすごい」

これはあくまで他人の「恋」であって、
コメットさん自身の「恋」ではない。
コメットさんはラバボーの「恋」の「輝き」を大
事にしたかった。

13話の「ヌイビトたちの夜」でケガをしたケース
ケのために奔走したのも、ケースケの「輝き」を
大事にしたかったから。

「星力」がいわば「星の子たち」の「輝き」を借
りるものなら、「恋力」も「他人」の「恋」の
「輝き」を借りるもの。

他人の「輝き」でコメットさんも「輝ける」。
そういうかたちでコメットさんは「恋」という
ものを知る。

ラスト、まったく変わらないコメットさんにくら
べ、ケースケは、景太朗パパに諭されたこともあ
ってか、自分の「気持ち」にだんだん気づく。し
かし、まだその「気持ち」を口に出して言う勇気
はない。だから、できるだけ「元の関係」で収ま
るようにした。

なんとなくケースケのほうが一方的に成長するこ
とで関係を修復したように見えます。
(2002/07/07記)

さすがにようつべで22話は発見できなかった。