「仮面ライダー響鬼」の事情―ドキュメントヒーローはどう〈設定〉されたのか

「仮面ライダー響鬼」の事情―ドキュメントヒーローはどう〈設定〉されたのか
「仮面ライダー響鬼」の事情―ドキュメントヒーローはどう〈設定〉されたのか片岡 力

五月書房 2007-04
売り上げランキング : 17171

おすすめ平均 star
starヒーロー番組であるための葛藤
star全身で企画に取り組んだ著者の姿勢
star平成ライダーの楽屋裏

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

今まだ途中なんだけど、かなり面白いです。「今、子供向け、とはどうあるべきか」にこだわっている人間にとってはかなり刺激的であり、示唆的であり、いい意味で反面教師的である。こんな迫真な文章を読んだのは、「それがVガンダムだ」の富野インタビュー以来だ。

この企画段階での熱いハードなやり取りは、かろうじてまだ子供向け特撮が、オモチャを売ること前提にあるジャンルだからだろう。とにかく商売としてのハードルが高いのだ。そのハードルを、単なるガキ向けにせず、良質な作品を維持しながら超えることが如何に困難なことか。それはもう実際に放映された「響鬼」がどういう結果になったかを見れば一目瞭然である。一方でもうDVD売りが主体となり、そのDVD売り上げすら落ちているアニメ業界のグダグダゆるゆるぶりはなんなのだろう。本数が増えたからクリエイターにとっては企画実現の可能性が広がったのだからそれは決して悪いことではない、という声もあるが(確かに否定はしないが)、ものは言い様で、アニメは一人で作るものではないわけで、ただでさえ人手不足な常態だから、一部の数本の作品に優秀な人材が行ってしまえば、それを確保できなかったところがグダグダになるのは当たり前なのだ。本数が多いったってほとんどが「保険」としての原作つきだし、出版社等も抱き合わせ感覚で売れればいいと思っているのだろう。

そんなゆるい状態で、「このギチギチの規制に力ずくでねじ込んであるいは騙くらかしてあの手この手使って何とか企画を通してやる」みたいな気迫が生まれるわけがない。

話を「響鬼」戻そう。この本読んで俺は久々に純粋に宣伝したくなったので、「ためし読み」感覚で一部本書から書き起こそうと思ったのだが、どこで切り取っても面白いので断念した。

仮面ライダー響鬼」に多かれ少なかれ思い入れのある人間、そして実際に放映されたその作品のあり方に未だにもやもやしている気持ちを抱えている人は是非読んで欲しい。立ち読みできる環境があるのなら中身見てからでもかまわないが、中身を見ずに買っても絶対に損はしない。