第20話『カテズで勝てず』(2003/02/08放送)

脚本/浅川美也
コンテ/森邦宏・斧谷稔
演出/森邦宏・古賀理恵
作監大森英敏

■ゲイナー・サンガの前回のあらすじ。
「かつてゲインと『エクソダス』をした人物が、新しいシルエットマシンの部品を持ってきてくれた。そのおかげで、偽者のキングゲイナーと戦うことになった僕は、ゲインの新しいマシンで命拾いをした。失敗した『エクソダス』の経験から人生を間違えたエリアルという人から、僕は、一つの事柄にもプラスとマイナスの見方があることを知った」
■物資の買い出しにドームポリス「カテズ」に訪れたゲイナーとサラは、運悪くケジナンとエンゲに見つかり、追われることとなってしまった。
■ゲイナ−「ついてないなあ」
サラ「デート気分で浮かれてるから」
ゲイナ−「そんなつもりじゃ」
サラ「あなたにそんなつもりがなくてもあたしが…」
ゲイナー「え?」
サラ「(赤くなって)…あははは」
■ケジナン「ヤーパン野郎を捕まえて、新しい上官殿に我々の実力を認めてもらう!」
エンゲ「アスハム殿のために?」
ケジナン「ちがう! 俺の上官殿は、あのシンシア殿だ」
エンゲ「そりゃそうか。あのちっちゃなお尻と、あるのかないのかわからないかわいいバスト。…クククク」
ケジナン「あんなお坊っちゃんを指揮官の座から引きずり降ろして…」
アスハムから通信。
アスハム「何をしている! 『エクソダス』の実行犯を追い詰めたんじゃないのか」
■シベ鉄の列車。
アスハム「カテズのドームポリスの外へ繋がる出入り口は、すべて封鎖だ」
ジャボリ「は、はい。アスハム様はシベリア鉄道の人間になってしまわれたのですね」
アスハム「この制服も、悪くはあるまい? サイズもちょうどいい」
ジャボリ「は…はい…(ジャボリの持っいた白百合の花?の一つが落ちる)あら?」
■シベ鉄の隊員たちに追われつつ、ゲイナーとサラはゲーセンに逃げ込む。
ゲイナ−がやろうとしたゲーム画面で、シンシアがクイーンの称号を得たことがわかる。
そしてその当のシンシアはゲイナーたちのすぐとなりにいた。
リアルで初対面のゲイナ−とシンシア。
しかし、ゲイナーとサラがゲーセンにいることがシベ鉄にわかってしまう。
遊び気分のシンシアは二人に逃げ道を案内する。
■追ってくるケジナンとエンゲをシンシアが追い払い、指名手配されたにもかかわらずシベ鉄に反感を持つカテズ市民の協力を得て、三人は脱出に成功する。
サラ「シベ鉄って、どこでも嫌われてるのね」
ゲイナー「絶対につき出されると思ったものな、シベ鉄に」
シンシア「なんか、これで終わりだなんて、物足りないな〜」
ゲイナー「冗談じゃないよ、これはゲームじゃないんだ」
シンシア「フフフ…ゲームだと思った方が、楽しいんじゃない?」
サラ「肝が据わってるのねえ、シンシアさんは」
シンシアにチョコボールを薦められるサラ。
サラ「気にならない? 私たちがどうして追われてるんだろうとか」
シンシア「別に。それより、嬉しかったな。ゲイナーに会えたし、サラとも知り合えたし」
■その後、ホログラムの記念写真を取る三人。
ゲイナ−「ちゃんと写ってるんだ」
シンシア「あたしちんくしゃだよ〜」
サラ「そんなことないわよ。かわいいかわいい、二人とも」
シンシア「サラお姉ちゃんだね」
■その直後、シベ鉄に問いつめられたゲイナ−だが、シンシアがシベ鉄隊員にとび蹴りをくらわせ、三人には走って逃げる。ゲイナーは嫌な予感がするのか、走るシンシアの背中をじっと見る。
■ゲートに辿り着き、そこでキングゲイナーを見たシンシアはゲイナーが何者であるかを知る。
シンシア「嬉しいよ! ゲイナー、サラ! あたしたち、やっぱりライバルなんだね!あはははっ、ドミネーター!」
ドミネーターを呼ぶシンシア。卵状態のドミネーターが降りてくる。
ゲイナー「あの光…そ、そんなバカな」
サラ「卵型のオーバーマン…」
ドミネーターのコックピットが開く。
シンシア「そうなんだ。あたしはこういう人なんだ」
ゲイナー「こ、これが世の中ってことなの? これが…」
アイキャッチ
キングゲイナーVSドミネーター第2戦。
シンシア「勝負しましょう、ゲイナ−。新しいゲーム、スタート!」
シベ鉄のドゴッゾがやってくる。ドゴッゾをなぎ払うキングゲイナー
ゲイナー「サラは、逃げろ!」
サラ「ゲイナ−、逃げるのよ! あなたはシンシアとは戦えないわ」
シンシア「まだ本気でやってないね」
ゲイナー「待ってよ、僕は、戦う気持ちはない!」
シンシア「どうして?」
ゲイナー「だって友達だろ? シベ鉄から逃げるの、手伝ってくれたじゃないか」
シンシア「友達なら遊んでよ」
ゲイナー「戦いは遊びじゃないよ。遊ぶのなら他にもいろいろあるじゃないか」
シンシア「ダメ。一番楽しいじゃないか。オーバーマンで戦うのって」
ゲイナー「そんなこと」
シンシア「こんな時は体中の血が騒ぐだろう? 血が騒ぐんだよ!」
ゲイナー「シンシア?」
シンシア「あたしの死んだ母さんは、最高のオーバーマン乗りだったんだ。その娘のあたしだから、これがこんなに、楽しいんだよ!」
ゲイナー「待って!」
シンシア「遊ぶのって本気でないと、つまんない」
ドミネーターに蹴りを入れるキングゲイナー
シンシア「やられた!」
ゲイナー「僕にだって、ニンポーカラテがある!」
シンシア「相手が強ければ強いほど、燃えるんだよね! 母さん!」
逃げるキングゲイナーをドミネーターが捕まえる。
シンシア「逃がさないって言ってんだよ、ゲイナ−。ちゃんと武器を持って戦ってよ。これではあたしが、一方的に勝っちゃうでしょ!」
ハサミ状に変型したドミネーターの手が迫ってくる。
ゲイナー「そう思うなら、思え! このチェンガンで!」
キングゲイナーのチェンガンの刃とドミネーターのハサミがぶつかる。
ゲイナ−「悪いけどシンシア、斬るぞ!」
シンシア「さすがゲイナー、愛しちゃう!」
キングゲイナーの方が劣勢。
シンシア「うん、全部かわすなんて、やっぱりゲイナーはセンスがある。けどいつまでもつのかな?」
ゲイナー「このままじゃ…このままじゃ、殺されるぞ」
シンシア「ゲイナ−、本気で攻撃を仕掛けてないだろ。だったら、バカにするよ…」
ゲイナー「殺気? 殺されるのか? あの子の癇癪で…」
シンシア「だったら遠慮なく勝たせてもらうよ、ゲイナー!」
ゲイナ−「癇癪持ちに殺されたくはない!」
■そうゲイナーが叫んでコックピット後ろのレバーを引くと、オーバースキルが発動。
キングゲイナーからフォトンマットの虹色に似た光が四方に広がる。
それは、カテズのドームポリス全体を停電させ、シルエットエンジンの動きをも止めてしまう。
カテズに列車が入る直前でキングゲイナーのその光は見たアスハムは、列車から降りて戦いの現場へと向かう。そのあとを追うジャボリ。
■サラ「キングゲイナ−があんな光を…見たことない…」
シンシア「ステージ2ね、ゲイナ−君。…何?」
光に包まれながら、チェンガンを構えるキングゲイナー
シンシア「やめなよ、ゲイナ−。かっこつけなんて、ゲームでは何の役にも立たないの、知ってるだろう?」
ゲイナー「しかし、キングゲイナーにニンポーカラテを教えてるとき、こいつの潜在能力は、決定的に違うと、わかったんだ!」
キングゲイナーが黒雲を呼んでいるように見える。
シンシア「この雲、なんだ? 知ってるぞ…あられを呼んだ? 嫌な奴!」
ゲイナー「このブリザードは、オーバースキルによるもの!」
シンシア「何? オーバーフリーズするっていうの!?」
ドミネーターの体が凍ってゆく。
シンシア「…変型できない…こ、これって、ただの冷凍じゃない、オーバーフリーズだ」
ゲイナ−「死にたくないが、キングゲイナーの力か? シンシアの機体が凍りついているように見える。
だとしたら、こいつの力は何なんだ!? 感謝するけど!」
ドミネーターに向かっていくキングゲイナー
ゲイナー「戦う道具さえ奪ってしまえば、シンシアの生身の体の癇癪(感触?)くらい、受けとめてやるから!」
■シンシア「本気になってくれたんだね、ゲイナー君。だったらゲイナ−、ひとつ教えてあげる。
キングゲイナーが使った、オーバースキルの秘密をね! 普通の凍結とは違うんだよ。命を生かしも殺しもするし、もっと教えてあげるよ、このドミネーターという、オーバーマンのこともね!」
ゲイナー「なんで?」
シンシア「だって、隠し技を隠したまま勝ったって、ほーら、得点低いじゃない?オープンでやりあえば気持ちいいし、得点も高い!」
ゲイナー「なら、言い訳をさせてくれ。キングゲイナーが、そこまでその機体を凍らせることが出来るオーバースキルを使うなんて、知らなかったんだ」
シンシア「らしいけど、それはちょっと許せないんだよね」
ゲイナ−「僕らは戦うことはないんだ!」
シンシア「ゲームは開いてる! ドミネーターは、オーバーフリーズを溶かすことが出来るんだ!」
ゲイナー「ええっ!?」
シンシア「教えてあげたよ!」
シンシアの言葉通り、ドミネーターのオーバーフリーズが溶けていく。
ゲイナー「チェンガンの粒子共振(?)も三倍以上!」
シンシア「ドミネーターほどじゃないだろ!」
■その戦いを見ているアスハム。
アスハム「ドミネーターも、オーバーデビルの眷属なら、あのヤーパンのオーバーマンも、オーバーデビルの眷属であったか…」
ジャボリ「オーバーデビルって、何なんでしょう?」
キングゲイナーとドミネーターのもとに駆け寄るサラ。
サラ『二人とも…バカなんだから…バカなんだから…』
■ドミネーターを掴んだキングゲイナーはまたオーバーフリーズさせ、
シンシア「しまった。オーバーデビルのようじゃないか」
動きの止まった機体に斬りかかる。
ゲイナー「はああああっ!」
シンシア「くぅぅっ !」
サラ「やめなさい!」
サラが転ぶと、ポケットから落ちた三人の記念写真のホログラムが宙に舞う。
■ドミネーターに斬りかかるゲイナ−だが、一瞬、オーバーフリーズの寒さを感じ、その隙を突いてシンシアがキングゲイナーの脇腹を斬りつける。ドミネーターの刃はコックピットのゲイナ−まで達している。
シンシア「あはっ、勝った。ゲームチャンプに勝った!」
キングゲイナーは落下し、着地する。ドミネーターも着地。
■シンシア、コックピットから出て、
シンシア「ゲイナー君、本物のオーバーマンでは、私の方が上だったね」
サラ、動かないキングゲイナーに異状を感じ、駆け寄る。
シンシア「でもね、ゲイナ−君はいいセンスしてるよ。(サラが通り過ぎる)あ、サラ、見てたの?」
サラ「(ゲイナーに)あなたは…」
シンシア「どうした?」
コックピットが開いてゲイナーが出てくる。
サラ「ゲイナー君!」
ゲイナー「大丈夫だよ」
サラ「嘘言って!」
シンシア「(口に手をあてて)ゲイナ−…どうしたの?」
サラ「ちょっと見せなさい!」
ゲイナ−の脇腹から血が出ているのが見える。
ゲイナー「たいしたことない…」
サラ「防寒コートにも、こんなに血が滲み出てるのよ! 酷い出血よ。止血しなくちゃ」
ゲイナー「こんなところじゃ、コートは脱げないだろ…うっ」
ぼうっとしてるシンシアに、
サラ「シンシアは手袋を取って」
シンシア「え?」
サラ「手袋を取りなさい!」
手袋を取ったシンシアの手をサラは掴み、ゲイナーの傷のところに持っていき、
サラ「ほら、触って。ちゃんと触りなさい! やさしくね。
…コートがなければ、ゲイナ−のお腹はメチャメチャになっていたわ」
シンシア、自分の手に付いた血を見て、
シンシア「あ、あたしのせい…あたしのせいだよね…」
サラ「そうよ。あなたのオーバーマンでやったのよ」
ゲイナー「ううっ」
シンシア「ゲ、ゲイナー、どうするの?」
ゲイナー「…いいんだ。済んだ。すぐ帰りたいんだ」
シンシア「こんなことになるなんて、思ってなかったんだ。ほんとだ。
ただ、本物のオーバーマンで、ゲイナーと戦えるのが、嬉しくって、楽しくって…」
サラ「子供みたいなこと、言うんじゃない!」
シンシア「…あ…」
サラ「少し考えれば、わかるでしょう? ゲームと違って、本物のオーバーマンには人間が乗っているのよ」
ゲイナーを座席の後ろに乗せ、サラはキングゲイナ−のコックピットに消えていく。
シンシア「あたしだって乗ってるもの!…でも…でも…ごめん…ごめんなさい…
ゲイナーを怪我させる気、なかったんだ…」
そう言って、シンシアは去って行く。
サラ「なんであんなに子供なの?」
ゲイナ−「サラ…」
サラ「行くわ」
シンシア、ドミネーターのコックピットに倒れこみ、泣き崩れる。
■カテズに戻ってきたドミネーター。
アスハムが迎える。
アスハム「怪我がなければよい」
シンシア「あたしは、たくさんのオーバーマンを撃破してきたんだよ…なのに…なのにさあ…」
アスハム「誇らしいことであります」
シンシア「そんな風には思えないよ!」
アスハム「オーバーセンスは、神経をささくれさせます。セント・レーガン特製の、空気ドームの用意をさせましょう。今はそうやってお泣きになられればよい。
人はそうやって強くなっていくものです」
■ゲイナー「僕は…気がついたら、本気でシンシアを倒そうとしていた…どうしてだか…わからないけど…」
サラ「今は何も考えないで、明日考えましょ」
ゲイナー「こわいんだよ…キングゲイナーって、僕に何かをさせようとしているみたいで…」
サラ「大丈夫。あたしがついてるんだから」

そろそろシリアス方向に風呂敷をたたみ始めるところ。もともと土台がシリアスな作品なんで、もうあんまりバカもやってられないし、バカとシリアスのブレンドの仕方も微妙、という回でしたね。

∀ガンダムがいまもっとも「旬」になってきてるのと逆に、ちょっとキンゲは時代からズレちゃってますね。