第16話『竜宮城を探そう』

前回、「3〜4歳」と「12〜3歳」のドラマ、
この2つの両立が難しい、と書きましたが、今回
はこの2つの組み合わせ方が独特で、個人的には
好きな回です。
コンテ/演出は佐士原武之。全体的にも例によっ
て「間」や夏の季節感、カットごとのゆったりし
た時間の取り方がうまい、11話『バトンの力』に
次ぐ、シリーズ前半の佳作です。


■「3〜4歳」と「12〜3歳」との境界線


バトンチームの応援練習の手伝いと、ツヨシくん、
ネネちゃんと海に行く約束がバッティングし、コ
メットさんはバトンチームの方を選びます。
つまり、はじめて「12〜3歳」のレベル(目線)
で、「自分がやりたいこと」を選びます。そして
自分の楽しい時間が終わり、夕暮れどき、浜辺に
ツヨシくん、ネネちゃんを迎えに行くところから
が今回のみどころです。

コメットさんは「3〜4歳」と「12〜3歳」の
2つのレベルを合わせ持つ存在です。ケースケは
はじめから「12〜3歳」のみです(今回ケース
ケは、2つのレベルの間で揺れるコメットさんの
描写のための「補助線」のような役割のみです)。
このシーン、コメットさんは「12〜3歳」のレ
ベルで入ってきます。ケースケと同じレベルです。


「コメットさん、たのしかった?」
「う〜ん、とっても。みんな一つになって、すっ
ごく」
「なにやってんだ、バカ!」
「バカ? またバカって言った」
「こいつらだけで海に来させて、万が一のことが
あったらどうするんだよ」
「…え?」


ここで絶好のアイリスアウト。
アイキャッチを挟んで、後半、コメットさんは
「3〜4歳」レベルに後退していきます。


「だって、ケースケがいるから、大丈夫だと思っ
たんだもん」
「俺には監視の仕事があるんだぞ。こいつらの面
倒みてらんねえだろ」
「ケンカやめようよ」
「やめようよ」
「ケンカしてるんじゃないよ」
「ごめんね、ツヨシくん、ネネちゃん。…ケース
ケの言うとおり、わたしが悪いみたい」
「泣くなよ」
「だってわたしが悪いんだもん」
「逆ギレすんな」
「キレないよ。悪いって認めてるだけだよ」
「それがキレてるっていうんだよ」
「じゃあ、どうしたらいいの!?」
「今度は開き直るのか?」
「やめようよ」
「わたしが悪いんだよ。ラバボーに押しつけちゃ
ったから」


この後、コメットさんはツヨシくんたちに、ラバ
ボーはメテオさんといっしょに竜宮城を探しに行
ったと教えられ、「浦島太郎」の物語をそのまま
信じてしまいます。

海に向かって呼びかけるコメットさん、ツヨシく
ん、ネネちゃん、パニッくんの4人。

「おーい。おとぎ話だからなー。竜宮城なんてほ
んとにはないぞー」

呆れるケースケ。
ここで、前者4人が「3〜4歳」側、ケースケが
「12〜3歳」側と、そのまま浜辺に境界線が
引けるくらい、はっきりと分かれます。

ケースケとの会話でコメットさんは、「わたしが
悪いみたい」と言っているように、自分が何故悪
いのかということを、あまり自覚していません。
少なくとも、ケースケの言った、「万が一のこと
があったらどうするのか」とは考えてません。見
事なくらい、そういう方向には行きません。
しかし、悪いとは思っている。
どう悪かったのか。
答えは今回のラストにちゃんと出ています。

ツヨシくん、ネネちゃんはあくまでコメットさん
と遊びたいと思っている。
そこで、コメットさんは藤吉家のビートルを星力
で改造、海底ヘ向かう。そして、


「わあ、おさかなさんといっしょにおどってる〜」
「ネネちゃんもおどってる〜」
「ね、みんなと一つになって踊るって楽しいの
(前半の、バトン練習のこと)。こういうのツヨ
シくんとネネちゃんにも教えてあげたかったんだ」
「やっぱりだ」
「やっぱりだね」
「…何が?」
「コメットさんは、たのしいのひとり
じめにしないよ」
「たのしいのわけてくれるんだよね〜」
「…ありがと」


つまり、コメットさんは前半で、自分が「たのし
い」を「ひとり占め」したから、(ツヨシくん、
ネネちゃんに)「悪い」と感じた、とも読めるの
です。
この二人を海底に連れて行くくだりは、コメット
さんが再び「12〜3歳」のレベルに戻って、
「親代わり」のつとめを果すことでいわば「罪滅
ぼし」をしているようにも見えます。

「12〜3歳」のレベル、それを「3〜4歳」の
レベルからみると、「3〜4歳」は「たのしい」
を「ひとり占め」されたと感じる。そこで、「た
のしい」を分けてあげる時に、いったん「12〜
3歳」は「3〜4歳」のレベルに目線を落し、
「3〜4歳」と気持ちを共有してから再び「12
〜3歳」に戻る、という構成でしょうか。

佐士原さんのコンテの組み立て方、見せ方も見事
だと思います。(2002/06/07記・06/22修正加
筆)