第13話『ヌイビトたちの夜』

■「好き」と「輝き」のあいだ


6月は「衣替え」、だから「ヌイビト」というシ
ンプルな思いつきから発想された話のようですが、
今回はコメットさんとケースケのやりとりが中心。
ただひたすら「無垢」にケースケのことが気にな
るコメットさんと、(景太朗パパの言うとおり)
意識しているがゆえに素直になれず、強がり、逆
に反発してしまうケースケ。

ケガをしたケースケを心配して、コメットさんら
しく、はたから見るとおかしさを感じるほど、駆
け回ります。駆け回る描写そのものが、今回のポ
イントと言えます。

コメットさんの行動は、ケースケのことが「好き」
だから、というのは言えなくもないのですが、
10話『はじめての好き』や、11話『バトンの力』
でのセリフであったように、コメットさん自身、
「好き」というのがどういうことか、わかってい
ません(最後までその段階で止まっている感じも
あります)。
むしろそうではなく、「好き」以前の、ケースケ
の「輝き」を大事にしたかっただけかもしれませ
ん。
彼女自身、今回、
「ただ『輝き』が見たかっただけ」と言っていま
すから。

そう考えると、10話の、お悩み解決ビトの、『姫
様にはこのひとが好きとか、あのひとが嫌いとか
はないでしょう。姫様はみんなのことが好きでし
ょう?』というセリフがわかってきます。

つまり、誰彼かまわず、ひたすら「輝き」を大事
にしたい、というのが最優先のように思えます。
でも、後半に行くにしたがって、それとは別にケ
ースケへの想いが強くなっていく。
「気持ち」はあるのに、コメットさんは「それ」
が何なのか、わからない。特にケースケの「輝き」
を大事にしたいのか、「好き」だからなのか。

景太朗パパの、
「あいつ、コメットさんの前だと素直じゃないか
らな」のセリフに、
「そっか、わたしじゃなければいいんですよね」
と返してしまうコメットさん。

平気でこういうことを言ってしまうこと自体、
「好き」をわかってない証拠です。


■オーバーアクションの中村演出


そんな突っ走るコメットさんを支えているのが、
オーバーアクション、ハイテンションが特徴
的な中村演出です。

氏の演出では、とにかくキャラがじっとしてい
ません。カットごとの時間が短く(「間」が
なく)、常に走り回っている印象があります。
それだけでなく、日常的な芝居、たとえばただ振
り向いたりするようなシーンでも、身体全体を動
かして(オーバーアクションで)表現します。
「身体性」の強い演出、「感情」を「身体表
現」で見せる演出と言えるでしょう。

フィックス(固定カメラ)であまり動かさず、
「構図」で見せる神戸演出、「間」で見せる佐
士原演出とは正反対であるためか、作品全体の
印象を、バラツキの多いものにさせてしまう部分
もありますが、その矛盾したような「多様性」が
この作品を豊かにしているような気もするのです。
(2002/05/25記)