萌え系アニメよりも萌えさせる自信がある

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巻末の富野インタビューで萌え系アニメについて言及してるので一部書き起こしてみる。

萌え系アニメよりも萌えさせる自信がある

(途中から)
幼児向けの作品や、動物が活躍するような作品はもちろん、たとえば美少女物を作れと言われても、やれないことはないと思うんです。「パンチラを本気でやってください!」と言われれば、それをうまく見せる自信はあります。美少女物のオタクにならずに作るという手法を知っているからです。ですから、美少女マニアより面白い作品を作れるのではないかと思います。実際にやったことはないので、うぬぼれているんですけどね。

美少女アニメ、いわゆる「萌え系アニメ」というものは、パターンを踏襲する作り方なんでしょうか?

パターンではなく、「萌える」という視聴者の心に寄り添って作ってあげればいいだけのことなのです。先程例に挙げた「パンチラ」で言えば、そのシーンに行くまでに、ちゃんと視聴者の心の準備をさせてあげるのです。準備させて初めてパンツを覗くシーンをやり、場合によってはその先の場面を展開します。視聴者の性的欲求を満たすための、脈略あるシーンの積み重ね…その呼吸をきちんとやるだけでいいのです。
一人だけの部屋で、こっそり見るものを作るノウハウだって知っているつもりです。萌え系アニメを、物凄くあからさまにもできるし、ほのかな雰囲気で作ることだってできます。パターンというより、すべて「タイミング」なんですよ。そのタイミングも、物語が作りやすいからという自分の都合のタイミングではないんです。「どうしてもそうならなければならない」という必然的な設定を物語の入り口に作り、物語の流れに脈略を持たせることが重要なのです。

―ちなみに、現存の萌え系アニメに関しては、どのようにお思いですか?

僕は、文化庁メディア芸術祭などアニメに関するコンペの審査員も務めています。ですから、この1年の作品を大雑把にですが100本ほどは見てきました。それで強く感じたことがあるのですが…「僕が『萌え』を演出するなら、あんな声の声優さんは使いませんよ」。今主流になっている、癇に障るような声よりも、もう少し落ち着いた優しい声の方を探すことから着手するでしょうね。萌え系に癒しを求めている視聴者が、あんなにワンパターンな声とセリフで満足するわけがないのです。僕には、今の作り手が視聴者をナメているとしか思えません。
そのことは、演じる声優さんの側でも感じているようです。ある女性の声優さんから「セリフがいつも同じなんです」と相談されたことがありますから。同じような声、同じような演技、同じような話の展開、同じようなシチュエーション。3カットも見れば先がわかってしまうような作品は、面白くもなんともないでしょう。萌え系アニメの作り手には、「どうか、マニアになる前に人を楽しませてくれ」と言いたいですね。

―楽しい作品を作るには、具体的にどう作ることが重要なのでしょうか。

プロフェッショナルに考えれば、思考がマニアックになっています。でも、マニアックになる前に、とても重要なことがあるのです。「萌え系」や「美少女アニメ」と呼ばれるものですら、バラエティーショーでなければならない…ということです。
だから、チラッと覗くパンツのデザインや柄模様だけに意識を集中しているような美少女アニメを見ると、僕は「それは違うだろう」と思います。バラエティーショーの肝は、やはりキャラクターです。作り手の好みかもしれませんが、同じような美少女キャラばかりゾロゾロ出てきても、それはバラエティーショーにはなりません。違う性格を持つ様々なキャラクターがどう絡み合うかという構図を、きちんと作っていかなければいけないと思うのです。

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また、先に出たジオンサイドの富野インタビューでは、高畑勲との関係の話が面白い。