第2話『新しい家』

■「ズレ」その2


実は微妙ですが、1話でツヨシくんとネネちゃん
と、コメットさんが初めて出会ったとき、わずか
な「ズレ」がありました。セリフを書き出してみ
ましょう。

(コメットさん、保育園から出てきたボールをとって)
「(ラバボー?)…違うか…こまったなあ」
「こまったさんだって」
「こまったさんっていった」
「コメットです。あ…オッハヨウゴザイマスデス」
「がいこつじん(外国人)か?」
「ちがうの。よその国のひと」
「そうです。わたしは、ハモニカ星国から来ました」
(ここで間があって)
「…こまったひと。ツヨシくんたすける」
「ネネちゃんもたすける」
「助けてくれるの?」
「ママがこまったさんはたすけてあげなさいって」
「ママはたすけるひとなの」

このやりとりのポイントは二つ。
「間」のあとの「こまったひと」。
言葉どおり「困った」という意味と、「おかしな
ひと」という、二つの意味があります。
いわゆるダブルミーニング
これが脚本上の「おけやマジック」と呼んでもい
いもので、以後のエピソードでこのやり方は頻発
します。演出も「間」を入れることでそれを支え
ています。
もう一つ。
>「ママがこまったさんはたすけてあげなさいって」
>「ママはたすけるひとなの」
これは大人である沙也加ママとコメットさんとの
「ズレ」が解消可能なものであることを示す「伏
線」です。

で、このあと、ツヨシくんネネちゃんとコメット
さんの関係は
「おもしろいおねえちゃんだ」
ということで「ズレ」があっさり解消してしまい
ます。


■コメットさんの「現実」、藤吉家の「ファンタジー


さて第2話。
とりあえず、一晩藤吉家に泊めてもらうことにな
ったコメットさん。家に向かうあいだ、沙也加マ
マとの会話。

(沙也加ママがツヨシ、ネネに「ママはたすける
人」とさんざん強調された状況で)
「あ…星…」
「星が好き?」
ここで、車のフロントガラス越しに流れる夜桜と
星空のカットで「間」。次に沙也加ママの横顔で
「間」があり、
「…いい子かな…」
「は?」
「星が好きって言える子に、悪い子はいないかな
って」
このセリフとかぶる、「自分が認められた」と笑
顔を見せるコメットさんのカット。

沙也加ママとコメットさんとの「ズレ」がゆっく
り縮まってゆく、いいシーンです。

さらに、つぎの景太郎パパとのやりとりも観てい
る側を飽きさせません。

「お客さんかい?」
「コメットです」
「さっきからいってるよ」
「いってるいってる」
「やあ。我が王国へようこそ」
「王国?」
「我が王国の王子様とお姫さま。そして僕が王様
でお妃の奥さんだよ」
「わあ!」
苦笑して首をふるちょっと「現実的」なママ。
「わたしもハモニカ星国の王女なんです」
「はっはっは。それは奇遇だなあ」

決して「天然」ではなく、何となく、意識的に
「夢見がち」であろうとする(ように見える)
パパの態度。
「親」であるからそうなのか、あるいはもともと
そういう人なのか。とにかく、ある「ファンタジ
ー」を作り上げて、生きているひと。だからコメ
ットさんの(星国でのあたりまえの)「現実」と
そのまま繋がることができる。

作劇上としては、これも、
「現実」を「ファンタジー」化する、
「おけやマジック」の一つ。

(沙也加ママと自分の母親(王妃)と話をさせる
ために)桜の花びらでケータイを作ろうとするコ
メットさん。星力を集める前のラバボーとの会話。

「瞳に輝きを宿す者、見つけたぼ」
「そうなんだ、ツヨシくんたちだよね」
「でも王子さまじゃないみたいだぼ」
「王子さまだって」
「王子さま?」
「この家の王子さま。お姫さまもいるんだよ」

こういう「やりとり」が少しづづ、積み重なって、
「コメットさん世界」を形作っていくのがわかり
ます。

さらに極め付けは、「藤吉家王国憲法」。
景太郎パパなりの、「ファンタジー」を「維持」
するための「ルール」なのかもしれません。

そしてこの2話でコメットさんは、ツヨシくんネ
ネちゃんの「親代わり」であることを任されます。

その後、パニッくん初登場のところで、
「パニッくんはパニッくんだから」という、これ
またおけや氏独特の言い回しが出てきますが、こ
れについては後のエピソードで触れます。


■「対」(ライバル)としてのメテオさん


メテオさんは2話で初登場。
とりあえず、「ライバル」であるという「基本設
定」を見せる程度の描写です。
コメットさんたちとの「追っかけ」のあと、自分
の住む家を決めるのも、コメットさんとは違い、
風岡家夫妻を星力で操り、強引に決めてしまいま
す。それはそれで一応、コメットさんの場合の「対」
になってはいるのですが、実はそう単純に図式的
なものでもないことは、後のエピソードで明らか
になっていきます。(2002/03/03記)

メテオさんについては後のエピソードで明らかになるわけですが、
実はコメットさんも藤吉家にお世話になるのも、星の子たちの導きだったんじゃないか、と今になって思いますね。